研究シーズの内容
一度ある観光地への観光客が継続的に減少して、衰退傾向が明確になってしまうと、その段階での立て直し策は限られ、そのコストも膨大である。したがって、観光地の発展過程において、衰退の兆候を早期に発見し、対策に着手することは、観光地のマーケティングやマネジメントに関わるものにとって、極めて重要な課題である。
観光地の成長と衰退の総合的枠組みを示した代表的な研究が、Butlerの観光地サイクル・モデルであろう。Butlerは、マーケティング論におけるライフサイクル・モデルに基づき、観光地の趨勢を6つの発展段階からなる仮説的なサイクルでモデル化したうえで、観光地の趨勢を観光客数の変化だけで代表させている。しかし、観光客数によって観光地の趨勢を代表させることには2つの問題がある。それは観光客数のデータ分析だけでは、観光地のマーケティングやマネジメントへの示唆がほとんど得られないという実用上の難点と、観光客数というデータが観光地の趨勢全体に十分に反映しない危険性である。
そこで、本研究が採用する観光地衰退の定義に関する基本的立場は、観光地の衰退が観光地に関する様々な否定的兆候によって特徴付けられるとする構造的視点である。この立場では、観光客数の減少は観光地衰退の傾向を示す複数の兆候のひとつとみなされる。このような構造的な視点を前提に、観光地の衰退に対する早期警戒手法に関して、医学の症候群による定義と診断の考え方を援用した。観光地衰退に深く関係している兆候を予め収集分類し、これを観光地衰退の現実的な定義とし、その分類された兆候リストへの当てはまりの程度とパターンによって、衰退の状態を推測し評価するという方法を用いている。
実用化イメージ
•地方自治体における観光政策策定、観光振興計画策定、観光戦略立案
•観光産業および観光関連産業、地域団体等における事業戦略策定
•観光地の評価指標の検討
関連する特許や論文等
論 文
・「観光地衰退に対する早期警戒手法 -国際観光客支出の指標的有効性-」 『日本観光学会誌(47)』,琉球大学,2006(Jun.)
・「観光地衰退に対する早期警戒手法の試験的研究 -来訪者入込量に関する衰退兆候-」 『日本観光学会誌(46)』,琉球大学,2005(Jun.)
・「観光地衰退に対する早期警戒手法 : 神戸市を事例とした試験的研究」 『関西国際大学地域研究所研究叢書(2』,P49-63,琉球大学,2005(Mar.)
その他多数(琉球大学研究者データベース参照)