研究シーズの内容
企業が新製品を市場に投入する際、最初に働き掛ける対象をどのような人々にすべきかは、効率的なマーケティングを行ううえで、重要な課題である。本研究では、このように新製品分野で市場を牽引するグループとして、Richard Floridaが提唱した「創造的階層(creative class)」の可能性を検討している。Floridaによれば、創造的階層の中でも中核的グループをなす「super-creative core」と呼ばれる人々は、新しい形式やデザインを想像する人々であり、彼らが創造したモノは速やかにそして広く普及する。この中核的グループに加えて、創造的階層にはハイテク産業や金融サービスといった知識集約型産業で働く専門職者、法律及び医学関係の専門家、経営管理者が含まれる。彼らもまた高い専門的知識を前提として、新しい方法や製品を生み出す可能性を持った人々であるとFloridaは指摘している。
本研究では、このようにFloridaが「創造的階層」と呼んだ人々に焦点を当てて、彼らの新製品への志向性を探ることを試みている。製品分野に関しては、消費の革新性に関する研究で先行事例の少ないサービス分野、特に今後、日本での市場規模の拡大が期待される旅行を研究対象とした。消費行動研究における革新性の概念に関して、本研究が採用する概念的立場を明らかにしたうえで、創造的階層が新しい旅の革新者であるという仮説を提示し、仮説検証の事例として、創造的階層による旅の活動に対する志向性調査の結果を取りまとめた。
さらに、本研究では、創造的階層の価値観に関して、ライフスタイルの重視がFloridaによって指摘されてることから、この層の仕事以外の生活全般に関わるライフスタイルと、特定消費分野におけるライフスタイルの両者を対象に調査を行った。その結果、ライフスタイルに関して、創造的階層と一般消費者の間には、伝統文化や芸術への好意、アウトドア活動への積極的参加、インターネットの積極的活用、本物志向、社会的消費傾向、異文化への興味、資産管理への高い意識など、いくつかの側面で顕著な差異がみられた。これは、日本の創造的階層の特徴を示しており、近未来の生活者像を予見させる一端となるだろうが、super-creative coreを焦点を置いた分析や研究によって、より一層具体的で明確な仮説が得られる可能性がある。創造的階層のライフスタル研究には、消費行動研究の分野にとどもらない成果をもたらす可能性もある。
実用化イメージ
・製品分野ごとの創造的階層の消費者の特性分析
・新商品企画・設計段階におけるマーケティング調査
関連する特許や論文等
論 文
・「「創造的階層」の消費行動研究 : 創造的階層と新しい旅」 『関西国際大学地域研究所研究叢書(3)』,P 3-15,関西国際大学,2006(Mar.)
・「「創造的階層」のライフスタイル」 『 関西国際大学研究紀要(9)』,P 127-139,関西国際大学,2008(Mar.)
その他多数(琉球大学研究者データベース参照)