研究シーズの内容
近年、人間活動は工業技術と共に著しい発展を遂げたが、一方では、その副産物として金属元素を汚染という形で周辺環境に排出することとなった。排出された汚染物質は様々な経路を得て環境中に拡散し、それぞれの化学的特性に従って、特定の場所に蓄積していく。これら汚染物質の環境中における動態を明らかにするには、分布状態を的確に把握するとともに、過去から現在までの変遷を人間活動と合わせて解明する必要がある。
水圏へ拡散した汚染物質はやがて粒子と共に堆積物内へ移行し、時間とともに累積し、各年代の汚染履歴が記録される。当研究室では、主に湖沼、内湾、沿岸等から採取した柱状堆積物に含まれる汚染物質の鉛直分布に210Pbex法を用い時間軸を与え、放射線の測定から堆積速度、化学成分の分析を行い、人間活動に伴う汚染物質の歴史的変遷の定量的評価をおこなっている。
これまでに、漫湖干潟において採取した柱状堆積物の年代測定を行い、堆積物に記録された過去約100年間の重金属汚染(アルミニウム、カルシウム、鉛、ニッケル、銅、水銀等)の変遷を時系列に沿って解析をしたほか、中城湾、羽地内海、金武湾、川平湾等についても同様の解析を行ってきており、堆積物に含まれる化学物質の経年変化の評価を行うことが可能である。
実用化イメージ
・河川や湖沼の改修・浚渫工事、沿岸地域の土地開発時の判断材料としての堆積速度に
関する評価・助言
・沿岸や湖沼の堆積物の汚染調査・環境評価
関連する特許や論文等
漫湖干潟堆積物に含まれる重金属元素濃度の経年変化.日本サンゴ礁学会誌,15:79-89(2013)