研究シーズの内容
競争戦略論の発展については、持続的競争優位の源泉として何に注目しているかという軸と、アプローチの性格という軸で分類・整理することができる。
本研究では、これらの軸にしたがって区分された競争戦略論の主要なアプローチを概観するとともに、競争戦略論の統合化に向けた有望なアプローチとされるダイナミック能力論の代表的研究を検討することで、その学問的可能性を探っている。
ダイナミック能力とは、「ダイナミックな環境変化の中で、社内外の能力を統合・調整したり、組み替えることで組織能力を継続的に創出し続ける能力、あるいはビジネスシステムを変革し、破壊的イノベーションを実現するのに有効な組織能力」であり、一言でいうなら「ダイナミックに変化する環境のもとで有効な組織能力」にほかならない。いま競争戦略論において、持続的競争優位の源泉として企業の「ダイナミック能力」が注目を集めている。
本研究における検討から、変化が非常に速い環境や破壊的イノベーションが生起する環境に、効果的に対処できる組織能力を構築することは、決して不可能ではないし、またそれが競争優位の持続可能性を高めることがわかった。その意味で、持続的競争優位の源泉を解明することが中心テーマである競争戦略論において、ダイナミック能力論はきわめて有望な研究アプローチといえよう。
本研究では、ダイナミック能力によって破壊的イノベーションを実現するための打ち手に関する2つの対立する見解についての比較も試みている。具体的には、クリステンセンの隔離論の主張をレビューしてその問題点を抽出したうえで、これとは逆に、知の活用と探索の両立は既存組織の中でも可能だと捉えるオライリーやタッシュマンたちの両利きのマネジメントの有効性を確認した。すなわち、組織内部における分化と統合をともに重視する両利きのマネジメントを実践することができれば、隔離論の問題点をカバーして、ダイナミック能力により破壊的イノベーションを実現すると同時に、持続的イノベーションも可能になると考えられる。
実用化イメージ
・企業における組織改変
・企業の経営戦略、事業戦略策定への競争戦略論の応用
・経営戦略、事業戦略構築に関するセミナー
関連する特許や論文等
論 文
・「ダイナミック能力と両利きのマネジメント」 『經濟研究』琉球大学 , P49‐63,2015 (Mar.)
・「ダイナミック能力論の可能性」 『經濟研究』琉球大学 , P125-145,2010(Sep.)
その他多数(琉球大学研究者データベース参照)