研究シーズの内容
マイケル・ポーターの代表作といえば、『競争の戦略』であるが、その後、多くの戦略研究家たちの反論にさらされた。ポーターはこれらへの再反論を、「戦略の本質」という論文のなかで、婉曲にそして端然と展開した。ポーター理論に関する解説の大半が『競争の戦略』と『競争優位の戦略』で止まっているため、それ以降のポーター理論を知るうえで重要な論文「戦略の本質」のポイントの解説を試みた。
ポーターが、自らの実証研究によって見出した「基本戦略」は、産業内での競争優位を獲得するモデルであり、①コスト・リーダーシップ、②差別化、③集中の3種類に分けられる。ポーターは、これらの基本戦略のいずれか1つを選択し、それを一貫して追求するべきと訴えた。複数の戦略を同時に追求すれば、中途半端な取り組みとなり、業績が平均以下になってしまうスタック・イン・ザ・ミドルに陥るというのだ。
一般的に、小規模な企業は競争の範囲が狭く、大企業は広い。それゆえに集中戦略を実行している小企業が、大企業のコスト・コストリーダーシップ戦略や差別化戦略をまねるのは簡単ではない。にもかかわらず、現実にはこのような挑戦に踏み出し、スタック・イン・ザ・ミドルに陥るところが少なくないとポーターは注意を促す。「特定のターゲットに絞りこみ、そこで最適化を図ろうとする集中戦略の利点は、競争の範囲を広くすると、失われてしまう」ということである。これに対し、80年代に躍進を遂げた日本企業は低コストと差別化を両立させているとされ、そこから、ポーターのいう基本戦略間のトレード・オフは存在しないのではないかという疑問が提起されることになった。ポーターは「戦略の本質」のなかで、「生産性の限界」というモデルを使って、これらの見解を否定している。に反論している。
ポーターがこのモデルで説明したのは、低コストと差別化の同時追求は、業務の改善や効率化による効果(業務効果)が限界に達するまで可能だが、限界に到達するとトレード・オフが生じ、低コストか差別化の選択を迫られるということである。つまり、日本企業が低コストと差別化を同時に追求できたのは、業務効果で欧米のライバルを大きく上回ったからであり、生産性が限界に達した時、低コストか差別化かというトレード・オフに直面したにもかかわらず、殆どの日本企業において、追求すべき競争優位の選択はなされなかったと指摘している。
自社がどのような顧客に狙いを定め、そこにいかなる価値を提供するのかを決めるのが戦略の基本である。 ポーターの考える戦略とは、競争優位の獲得・持続に向けて、自社が「何をし、何をやらないか」を選択することにほかならない。
実用化イメージ
・中小企業の経営戦略、事業戦略策定
・経営戦略、事業戦略構築に関するセミナー
関連する特許や論文等
論 文
・「キーワードで読み解く「戦略の本質」の読み方」 ダイヤモンド社 , DIAMINDハーバード・ビジネス・レビュー , P90‐97,2011(Jun.)
その他多数(琉球大学研究者データベース参照)