研究シーズの内容
日本で考える「観光」と世界観光機関(UNWTO)が規程する「tourism」は違う概念のものであるが、研究者の間では明白であったこのことが、観光事業者や行政関係者においては殆ど議論されていなかったと思われる。本研究では、日本が観光大国を目指して取り組む中で、特に地方自治体において必要となる観光政策の見直しと観光に関する意識改革を主題としている。
観光政策は、「国及び地方公共団体が適切な経費で最大の効果を上げることを目的とした観光事業展開のための施策」とされているが、その取り組みは地域によって大きな差がある。戦前、島嶼地域で農業や製造業振興に大きな期待が持てない沖縄県において、観光産業振興への期待は大きなものがあったが、沖縄戦によって観光資源がことごとく破壊され、戦後、日本とは異なる統治システムが適用されたことから、地域経済のなかで観光政策への取り組みは遅れた。
これまでの沖縄観光を考える上で最も重要な政策は1975年に開催された「沖縄国際海洋博覧会」であろう。その後ビーチリゾートとして施設の充実、インフラ整備が進み、評価も高まった。1994年から2013年までの約20年間、沖縄県の観光政策に携わった経験から、この間の観光危機管理と島嶼観光政策フォーラムは特に重要な政策であったと考えている。現時点では、「沖縄県観光危機管理基本計画」が策定されており、外部環境変化に弱い沖縄の特徴と島嶼地域という沖縄県の状況に応じた政策が実施されている。
日本が観光立国そして観光大国への道を歩むためには、観光政策関係者が観光の持つ領域をtourismの視点に立ち、政策の範囲をレジャー目的観光客誘致主体から、ビジネスやその他の目的旅行者まで広げて考えることが必要だ。特に地方自治体においては、自然・歴史・文化といった従来の観光資源開発に加え、「地方都市」の魅力を増すための政策が重要になる。また、従来の観光政策に加え都市政策や科学技術政策などと連動した幅広い取り組みが重要となる。変化の激しい時代には、先を見据えたハイブリッドな思考力を強化し、政策範囲を広げていくことが必要だ。
実用化イメージ
•地方自治体における観光政策策定、観光振興計画策定、観光戦略立案
•高度観光人材育成(経営者人材、次世代リーダー、地域リーダー等)
•地方自治体の観光行政に携わる人材の育成
•大学の「知」を活用した観光プログラムの開発
関連する特許や論文等
著書
・『沖縄観光進化論』 琉球書房, 2012(Dec.) .
論 文
・『新たな視点での観光政策研究』 日本交通公社,観光文化, 232号, P57-58 , 2017(Jan.)
その他(琉球大学研究者データベース参照)