リンパ節転移 婦人科腫瘍 低侵襲手術(ロボット、腹腔鏡) 子宮がん センチネルリンパ節 低侵襲手術 OSNA法 子宮がん手術において骨盤リンパ節郭清(切除)は、リンパ節による転移を防ぎ、正確なステージと術後療法の要否を決定するために必要ですが、下肢リンパ浮腫、リンパ嚢胞、腸閉塞など合併症が生じる可能性があります。センチネルリンパ節(見張りリンパ節=SN)とは原発巣の腫瘍からの転移が最初に生じるリンパ節です。SNに転移を認めなければその他のリンパ節にも転移はないと考えられます(SN理論)。リンパ節郭清を行う必要がなくなり、患者さんの術後のQOL向上に大きく貢献します。

子宮がんのSNを同定するためには子宮頸部の腫瘍周囲にトレーサー

(ラジオアイソトープあるいはインドシアニングリーン)を局注します。これはSN同定に有用かつ妥当性の確認された手技とされています。

手術中に骨盤後腹膜を展開し、SNを同定、摘出、回収します。

 摘出したSNは術中に病理学的に転移診断を行います。我々は標的遺

伝子CK19mRNAを検出・測定する分子病理診断(OSNA法)による

術中転移診断を行っており、従来の病理組織診断より優れたリンパ節

転移診断能を有していることを明らかにしています。

 本研究では摘出したSNに転移がなければリンパ節郭清を省略して

いるため、以下の項目に関して解析をすすめています。

①子宮がんにおけるSN同定率                  

 ②SN転移陰性例でリンパ節郭清を省略した症例の下肢リンパ浮腫    

  やリンパ嚢胞などの周術期合併症の出現頻度               

 ③OSNA法によるSN転移診断能                 

 ④OSNA法によるSN転移の腫瘍量(コピー数)による非センチネ     

 ルリンパ節転移や予後のリスク評価     

SN転移陰性でリンパ節郭清を省略できれば、術後の下肢リンパ浮腫やリンパ嚢胞はほとんどありません。術中の転移診断をSNに集中できるため、転移診断精度も向上します。OSNA法は従来法より迅速・簡便に転移診断を行うことが可能です。「SN転移の腫瘍量が小さい場合(微小転移)は非センチネルリンパ節転移がない」と確認できれば、リンパ節郭清が必要な症例はさらに減ると想定されます。乳がんでは既に保険適応のもと縮小手術が行われています。子宮がんでの保険適応を目指しています。 ●産婦人科教室では子宮がんに対するSNの研究を長年行っており、多くの論文を報告しています。●子宮がんでのOSNA法による術中診断は国内での実施は少ないため、力を入れている研究分野です。●臨床研究として、本手術を実施しています。 子宮がん手術に必須の骨盤リンパ節郭清を省略する、縮小手術の臨床試験を行っています。合併症を減らし、術後のQOLが向上します。子宮がんでの保険適応を目指して活動中。国内有数の先進的子宮がん手術の実施機関です。
PDFファイル:61-Mf-togami-med-SDGs3.pdf