酵素・ナノ材料 化学工学 エネルギー 物質変換デバイス機能設計 生物電気化学 バイオ燃料電池 酵素 メディエータ レドックスポリマー カーボン表面修飾 生体に安全・安心なグルコース(ブドウ糖)を燃料として発電を行うバイオ燃料電池の研究を行っています。バイオ燃料電池は生命がエネルギーを作る仕組みを応用した発電技術で、酵素を触媒に用いて燃料の酸化反応を行い電流を生成します。酵素はグルコース等を常温付近で酸化できるため、人体近くで使用するポータブル機器・医療用補助具の電源として期待されます。酵素が有する高い反応速度を発電に有効活用するために、ナノ材料との適切な組み合わせによる高性能化を目指しています。 酵素を用いて発電を行うためには、酵素から電極へ電子を移動させる必要があります。多くの酵素では、電極と酵素の間の電子移動を仲介するために、酸化還元を行う低分子(メディエータ)が用いられ、メディエータを高分子へ固定化したポリマーはレドックスポリマーと呼ばれています。酵素型バイオ燃料電池では、レドックスポリマーが関与している酵素から電極への電子伝達によって電流密度が制限されるため、酵素が本来有する高い反応速度が十分に活用されていませんでした。我々の研究室では、レドックスポリマーをナノサイズのカーボン微粒子(カーボンブラック)上に薄層で固定化することが高電流密度化に有効であることを示しています。レドックスポリマーの薄層固定では、カーボン表面の官能基を用いたグラフト重合や薄膜ゲル形成法を用い、グルコースを燃料に用いて数mA/cm2の電流密度を得ています。また、電極中の反応・拡散過程を考慮した化学工学的な数値モデル計算を行い、数百mA/cm2オーダーのさらなる高電流密度化が可能であることを示しています。現在は、酵素近傍の反応場制御によるさらなる高電流密度化の実証や、グルコース以外の燃料利用へ向けた検討を進めています。 将来的には、砂糖水(グルコース水溶液)を充てんしたカートリッジの交換で電力を供給するポータブル機器・医療用補助具の電源や、砂糖水を飲ませば充電できるロボット等への応用を目指して研究を進めています。また酵素を変更することで、グルコースに限らず糖・アルコール類、焼酎粕等多様な物質を燃料として利用できます。例えば体液に含まれる成分を燃料としたバイオ燃料電池の開発により、人や動物等のウェアラブルセンサーやペースメーカー等の電源としての展開も期待できます。 ●得られた成果は論文・学会等で学術発表を行い、総説や著書の分担執筆も行っています。●効果・応用分野に記載した応用展開以外にも、身近な物質を燃料にして発電できる可能性があります。ご興味のある方はご連絡ください。 エネルギー・物質変換デバイスの研究者。バイオ燃料電池では酵素の専門家や、燃料となる有機物質、応用分野に興味のある企業・研究者との連携を求めています。実用化に向けて様々な局面での共同研究等が可能です。
PDFファイル:5-Eg-tamaki-eng-SDGs7.pdf