脳神経内科 脳神経内科 分子生物学 ミトコンドリア病 ミトコンドリア 認知症 サルコペニア 健康寿命 ミトコンドリアは活動エネルギーを生み出す重要な細胞内小器官で、赤血球以外の全ての細胞に存在します。ミトコンドリアに異常があると、中枢神経系や骨格筋を中心に多様な症状を呈すミトコンドリア病という難病を引き起こします。一方でミトコンドリアは年齢と共に機能低下することも分かっており、老化にも重要な役割を果たしています。我々は成人のミトコンドリア病、中でも白質脳症および認知症へのミトコンドリアの関与と症状悪化を示すマーカーの探索を目指して研究しています。 ・現在進めている研究の核心は、潜在的に存在する成人・高齢発症ミトコンドリア病の原因遺伝子を明らかにし、白質脳症・認知症に及ぼす影響を明らかにすることです。・図1は、我々の施設で調べたミトコンドリア病疑い症例の分布です。通常考えられていたよりも、高齢で診断される症例が多いことがわかりました。・また、図2に見られるように、我々は原因不明の白質脳症と考えられた症例がミトコンドリア病と診断され、治療により改善した例を経験しています。・現在、ミトコンドリア病の原因を調べるために、次世代シークエンサーという複数の遺伝子を短時間で調べられる機械を用いて網羅的な遺伝子解析を行っています。・生化学マーカーであるGrowth differentiation factor 15 (GDF−15)は、ミトコンドリア病の診断に有用であると近年報告されており、我々の検討でも同様な結果が出ています。現在この検査を用いて病気の悪化の兆候を捉えられないかを検討しています。また白質脳症を調べるために検体として髄液を用いることも行っています。・ミトコンドリア病は筋肉に症状が現れることが多く、図2で認めるように特殊な筋病理所見をとることがわかっています。我々は加齢に伴う筋萎縮症であるサルコペニアと、ミトコンドリア機能障害との関連も調べています。 難病であるミトコンドリア病を正確に診断できれば、潜在的に存在するミトコンドリア異常に伴う認知症を見つけ、的確な治療をより早く行える可能性があります。診断マーカーの同定は治療法の評価や開発にも有用です。また、ミトコンドリアは運動や栄養により増減することが分かっています。ミトコンドリア病の病態を明らかにし、認知症やサルコペニアとの関連を検討することは、超高齢化社会が抱える「健康寿命を延ばすヒント」が豊富に存在する研究分野であると考えています。 ●科学研究費「白質脳症・認知症の原因としてのミトコンドリア病の原因遺伝子探索」(20K07906)●創薬だけでなく、栄養食品によるミトコンドリア機能の改善に対しては、健康に興味のある多くの人が関心を持つテーマであると考えます。 成人ミトコンドリア病の原因を探索し、認知症、サルコペニアとの関連を研究。ミトコンドリアの機能改善は健康寿命の延伸に繋がります。医薬品や健康食品、医療機器などの開発に関わる企業・機関との連携が可能です。
PDFファイル:47_Mf_okamoto_med-SDGs3.pdf