EUS-FNA 消化器癌 消化器免疫 膵癌 自己免疫性膵炎 gG4関連疾患 免疫 IgG4関連疾患である自己免疫性膵炎や免疫チェックポイント阻害薬による膵癌の治療など、膵疾患においては、免疫に関する知見が必要となる場面が多くなっています。当科は膵疾患への豊富な診療実績と超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)の高度なスキルを有しています。本研究では低侵襲なEUS-FNAによって得られる膵臓組織内免疫細胞を解析することで、難治性の膵癌や難病である自己免疫性膵炎に対する新規ターゲットとなりうる免疫学的分子を探索・解析しています。 近年、膵疾患における治療や診断で、免疫に関する知見が必要となる場面が多くなっています。膵癌や自己免疫性膵炎などの膵組織内微小環境の免疫学的解析のために免疫細胞を解析するには、手術検体を用います。しかし、実地臨床で化学療法を行う対象となる進行膵癌は手術適応外であり、また膵炎などは手術が必要な症例はほとんどないため、膵組織検体を入手することは非常に困難でした。本研究では手術に比べ、非常に低侵襲な方法である超音波内視鏡下吸引細胞診(EUS-FNA)によって得られる膵臓組織内免疫細胞を解析することで、難治癌である膵癌や、難病であるIgG4関連疾患・自己免疫性膵炎に対する新規ターゲットとなりうる免疫学的分子を解析しています。自己免疫性膵炎は腫瘤を形成し各種画像検査を駆使しても膵癌との区別が難しい症例が存在します。膵癌や自己免疫性膵炎の診断は各種画像に加えて、超音波内視鏡(EUS)を用いた膵病変の病理組織学的評価(EUS-FNA)が主体となっています。当科では膵疾患に対し年間約200例のEUS-FNAを実施しており、豊富な症例を有します。私たちはEUS-FNAの際に得られる膵組織検体から採取した血液中の免疫細胞を分離し、フローサイトメトリーを用いて解析したところ、組織中の免疫細胞が末梢血液とは異なる免疫分布をしていることを見出しました。当科の膵疾患診療実績を活用し、EUS-FNAで得られる膵組織中の免疫学的微小環境の解析を推進することで、膵癌・自己免疫性膵炎の新たな診断マーカーや治療標的分子を同定することを目的としています。 自己免疫性膵炎は発見から診断基準の制定まで日本が世界をリードしてきました。血清IgG4の高値と様々な組織へのIgG4形質細胞浸潤を特徴とし、発症原因は不明で疾患特異的マーカーも未確立です。罹患率は年間10万人あたり約1人と希少疾患ですが、年々症例が増加している指定難病です。また膵癌は非常に予後不良で「21世紀に取り残された癌」と言われる難治性癌です。これら膵疾患の免疫学的病態を解析・解明し、新たな診断・治療法を検討することは急務であると考えています。 ●医薬品・医療機器関係や臨床検査センターなど医療関連の会社や研究者との共同研究が可能です。●当科は癌免疫や炎症疾患の研究だけでなく、臨床研究・治験なども行っています。腫瘍溶解性ウイルスの膵癌臨床治験を実施中(2021年6月現在) EUS-FNAで得た膵臓の免疫細胞を解析し、膵疾患の新たな診断・治療ターゲットを探索しています。膵癌・自己免疫性膵炎への福音となり得る研究です。診療科では臨床研究や治験も随時、実施中。お問合せください。
PDFファイル:46-Mf-tanoue-med2-SDGs3.pdf