神経膠腫 脳神経外科 神経膠腫 がんゲノム診断 遺伝子パネル検査 近年、がんの診断・治療現場では、遺伝子変異に合わせて適切な薬物治療や集学的治療を採用する個別化医療が急速に発展しています。遺伝子パネル検査は、その際行われる遺伝子変異を総合的に解析し診断する手法です。特に脳腫瘍では、WHOによる統合病理診断が採用され、診断に遺伝子情報による分子分類が必須となりました。我々は神経膠腫診断に必要な50遺伝子による脳腫瘍に特化した遺伝子パネル検査(Kagoshima Brain Tumor 50 OncoPanel)を開発、検査体制を構築しました。 神経膠腫の診断に関しては、これまでは形態診断に基づいた診断分類が行われてきましたが、2016年にWHO脳腫瘍分類の改訂が行われ、神経膠腫の診断に分子分類が必須となりました。中でも、神経膠腫の発生初期に起こる遺伝子変化であるIDH遺伝子変異と染色体1番短腕(1p)と19番長腕(19q)の相互転座により引き起こされる1p/19qの共欠失が診断に必要となりました。2021年にはWHO脳腫瘍分類第5版が発表され、分子分類の重要性はさらに増しています。現在は、IDH遺伝子変異の有無は主に免疫組織染色で評価され、1p/19q共欠失の検出にはFISH法が用いられることが多いですが、一度に多くのがん遺伝子変異を検出することができず、また偽陽性や偽陰性の問題があります。 そこで我々は、神経膠腫診断に必要な50遺伝子のカスタム遺伝子パネル検査を開発し、院内で検査できる体制を構築しました。当院で手術を行った患者さんから摘出した腫瘍検体と血液検体からDNAを抽出し、次世代型シークエンサーを使用して遺伝子変異とコピー数変異を検出しています。図のように、分子分類に必要な遺伝変異だけでなく、その他のがん遺伝子変異も検出でき、有用であると分かりました。 鹿児島大学病院は慶應義塾大学病院と「がんゲノム医療連携病院」に指定され、がん遺伝子パネル検査を実施しています。WHO脳腫瘍分類では、形態学的診断から遺伝子情報を元にした分子診断へと大きな変更がありました。我々が開発したカスタム遺伝子パネル検査を脳腫瘍診断に組み込むことで、より高精度な診断が可能となります。また、予後及び治療反応性を予測する上でも有用である可能性があります。今後は遺伝子変異に合わせた特異的標的治療に繋がることも期待されます。 ●鹿児島大学病院は鹿児島県がん診療連携拠点病院として、がん遺伝子パネル検査によるがんゲノム医療を行っています。本研究はその一環です。 鹿児島大学病院に集まる県内すべての症例を用いて、遺伝子変異を検出しています。脳腫瘍の50遺伝子に特化することで10万円以下の検査システムが実現。医療機関等からの検査依頼に対応できます。お問合せください。
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