社会科教育 教科教育学 社会科教育学 社会科教育史 本研究では,社会科黎明期(1945-1958年)のカリキュラムの理論を対象とします。第二次世界大戦後,戦前の価値観を刷新する公民教育の方向性を求めて,文部省は社会科委員会を設置しました。委員会メンバー(以下,創設メンバー)が,どのような意図や願望をもって新しい社会科を創り上げたのかを明らかにします。「総合と分化」や「人間形成と道徳教育」を焦点とし,歴史的研究を進めることで,創設メンバーの社会科教育論の果たした役割と限界を再評価することが目的です。 創設メンバーは初等を担当した重松鷹泰・尾崎乕四郎・塩田嵩・上田薫,中等を担当した勝田守一・保柳睦美・松崎寿和・馬場四郎の8名を指します。彼らの経歴は,教師・学者・役人など,様々でした。 当時の日本は,各地で食糧難・物資難に見舞われ,日々の生活を送るのも苦労した時代でした。現場の教師は,クラス全員分の教科書やノートも満足に揃わない状況で,新教科である社会科に挑戦していました。日本国憲法や教育基本法の理念である民主主義の実現を目指したのです。 創設メンバーの中でも,とくに理論的指導者として活躍したのが重松・上田・勝田・馬場の4名です。彼らは全国各地を飛び回り,講演を行ったり研究の助言を行ったりするなど,社会科の普及に努めていました。「問題解決学習」という今も続く社会科教育の理論が誕生したのも,この頃です。 そこで本研究は,創設メンバーの社会科教育観に着目して,理論の再検討を進めます。戦前と戦後の論稿に加え,回想録を資料として用いながら,彼らの思想を読み解いていきます。 社会科黎明期の実践の一部は,今なお大学のテキストに掲載されるなど,優れたものとして評価されています。一方,理論に関しては肯定的な評価と否定的な評価に二極化しています。戦後70年以上経ち,生活科や道徳科ができるなど,社会科のカリキュラムも様変わりしています。その中でも,当初から変わらない「社会科らしさ」とは何かを追究します。新たな方法論の開発と成果の提示が課題となっている、社会科教育史研究の発展に寄与することができます。 中学校・高等学校の社会系教科を含め,生活科や総合的な学習(探究)の時間,または「特別の教科 道徳」といった関連領域との連携が望まれます。 1947年新学制施行と共に発足した社会科を、創設メンバー個々人の理論と活動を読み解くことで歴史的に考察する研究。「問題解決学習」など今に続く社会科教育の本質を追求し、社会科教育史に新たな視座を提示できます
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