慢性痛治療 麻酔科学 神経科学 ペインクリニック 慢性痛 ミクログリア マクロファージ 侵害受容性痛 神経障害性痛 慢性痛とは、傷が治る期間を過ぎても続く痛みです。本来、痛みには組織が傷ついたことを知らせるアラームという重要な役割があります。しかし、傷が治ってからもアラームが鳴り続けることがあり、これが慢性痛です。約20%の人が慢性痛を有していると考えられています。我々は手術麻酔やペインクリニック外来で、痛みの治療・緩和を行っています。痛みにおける免疫細胞や炎症の役割を解明し、痛みのメカニズムを探究することで痛みの治療法を改善することを目指しています。 痛みには、創傷や炎症による「侵害受容性」の要因、神経の圧迫や損傷による「神経障害性」の要因、ストレスなどによる「心理社会的」要因があります。我々はマウスを用いて侵害受容性痛や神経障害痛のメカニズムを研究しています。マクロファージは体内組織、ミクログリアは中枢神経に存在する免疫細胞の一種で、様々な炎症や創傷治癒に関与しています。マクロファージ・ミクログリアには炎症促進型と抗炎症型の大きく2つの極性があります。このマクロファージ・ミクログリアの極性が、侵害受容性痛や神経障害性痛の治療に重要であることがわかりました。つまり、抗炎症型マクロファージ・ミクログリアを増加させることで痛みを制御できると考えられます。そこに強く関与するのがヘム・オキシナーゼ-1(HO-1)という酵素です。我々はHO-1の抗炎症作用とマクロファージ・ミクログリアの極性変化に注目して、痛みの研究を行っています。現在は慢性痛を改善するには、どこの部位でどの時期にマクロファージ・ミクログリアの極性を制御することが重要なのかを検討しているところです。 慢性痛は難治性であることも多く、患者の生活の質(Quality of Life)を大きく損ないますが、用いられる薬物の治療効果は限定的です。本研究は免疫細胞マクロファージ・ミクログリアの役割を解明し、極性変化を誘導することで治療効果を上げる新規治療法の開発に役立つことが期待されます。侵襲制御学教室ではペインクリニックを担当し、慢性痛患者の臨床経験も豊富です。そのため、基礎研究と臨床研究の橋渡しにも貢献できると考えています。 ●国際学会(International Association for theStudy of Pain, Society for Neuroscience等)や国際誌(Pain Reports等)への発表を積極的に行っています。2019年には韓国の学会で招待講演を行いました。 免疫細胞の二極性に注目して、慢性痛のメカニズムを解明する研究。有効な治療法に繋がる可能性があります。大学病院のペインクリニックでは、専門医が最適な治療法を提案します。痛みでお悩みの方は受診してください。
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