ライフサイエンス 生理学 ストレス ストレス 遺伝子操作マウス 自律神経機能 ストレスが自律神経系を介して身体の不具合として顕在化するメカニズムを研究しています。我々が意識する・しないにかかわらず、脳は外界および体内状況を常に監視し、最適な行動を取れるように心臓や肺などの機能を時々刻々調節しています。山道でヘビに出会った時に、ヘビだ!と驚くのと心拍数が上昇するのとは、実は同時であって前者(驚き)が後者(心拍数上昇)の原因ではないのです。心の健康が身体の健康にも良いのは周知の事実ですが、その根拠の解明を目指しています。 ストレス源(意識的)大脳皮質(無意識)視床下部情動循環呼吸鎮痛体温骨格筋闘争・逃走反応(=防衛反応)ストレスを受けた際に心臓がドキドキしたり息がハアハア切れたりする反応には、脳の中の「視床下部」と呼ばれる部分が重要です。私たちは2003年に、視床下部に存在する特別な神経細胞オレキシン含有神経細胞を破壊するとこれらの反応が起こらなくなることを発見しました。闘争・逃走反応を支える体内状況の変化、すなわち防衛反応には多彩な面があります。血圧・心拍数・呼吸数・体温が上昇し、血液は内臓領域から骨格筋領域に多く流れるように再配分されます。また、痛覚は一時的に抑制されます。これらの全ての反応にオレキシン含有神経細胞が重要であることがわかりました。つまり、オレキシン含有神経細胞は防衛反応のマスタースイッチであると言えます。しかしながら、ストレスと一口に言っても闘争・逃走反応を引き起こす急性能動ストレスの他に、逃げ場のない慢性受動ストレスもあります。ストレスの種類によってオレキシン含有神経細胞の重要度にも差があるかもしれません。現在はこの点について検討を続けています。 オレキシン含有神経細胞の活動調節様式(脳のどの部位から、どの神経伝達物質を用いた入力があれば活性化、あるいは抑制するのか)の解明を目指しています。解明できるとオレキシン含有神経細胞のコントロールが可能。医薬品だけでなく、ツボや運動などオレキシンを抑える方法を開発することで、ストレス反応を抑制できます。白衣高血圧・あがり症・パニック症候群・心的外傷後ストレス障害(PTSD)・不眠症などのストレス関連疾患の効果的な治療法への応用も期待できます。 ●本研究はテキサス大学・金沢大学との共同研究です。●遺伝子改変マウスの自律神経機能計測では世界トップの技術を持っています。そのため、上記主題以外の共同研究を多数行っています。 ストレス反応のスイッチと言える神経伝達物質「オレキシン」を発見。そのメカニズムの解明により、ストレスの体への影響を制御する方法に結び付ける研究です。研究で培われたマウスの機能計測技術も注目されています。
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