アグリ・バイオ 極限環境微生物 酵素 好塩性酵素 分子育種 フォールディング 高濃度塩環境で生育する好塩性酵素は、高い塩濃度で働けるだけでなく、非常に溶解性が高く、熱や変性剤に強いものが多いという産業に活かせる特徴を持っています。しかし有用性の反面、塩が無い環境下では構造が保持できないために、実際に活用するのは困難でした。我々は好塩性酵素の好塩性メカニズムを分子レベルで解明する事により、好塩性酵素の特殊能力を産業に活かすための足がかりとなる研究を進めています。 みそ・醤油、塩辛等の塩蔵食品等に見出される、高度好塩菌の生育には2.5M(モル)以上の塩が必須で、その酵素も安定性と活性に1M以上の塩を必要とするのが一般的です。この高度好塩菌由来の酵素は、タンパク質表面に酸性アミノ酸を多く持つことが明らかな特徴となっています。我々は高度好塩菌から、30℃以下なら塩が無くても安定性や活性を維持する、例外的な酵素「ヌクレオシド二リン酸キナーゼ」を見出しました。この酵素も構造形成には高濃度の塩が必要で、低い塩濃度では塩がタンパク質表面の遮蔽を行い、高濃度では疎水的コア構造の形成に寄与しているというメカニズムを明らかにしました。また、低い塩濃度下でも構造形成できるこの酵素の変異体を作成して、そのサブユニット構造の安定性に好塩性タンパク質の好塩性が深く関わっているという、新たな特徴も示すことができました。これらの知見を基にして、サブユニット間の相互作用をコントロールするという新しい手法と、タンパク質表面に酸性アミノ酸を増加させる手法を組み合わせることにより(図)、好塩性酵素の分子育種技術を確立したいと考えています。それにより有用な好塩性酵素を容易かつ安価で提供できるようになれば、好塩性や熱、有機溶媒に強い特性を活用した、好塩性酵素の産業利用が可能になるはずです。●酵素育種のモデルサブユニットコントロールサブユニットコントロールコントロールサブユニットコントロールサブユニット酸性アミノ酸塩基性アミノ酸酸性アミノ酸を増やす 「なぜ塩に強いのか」という好塩性酵素の塩に対する分子メカニズムを解明することができれば、好塩性酵素を一旦は変異体の状態で精製し、利用時にリフォールディング(元の活性状態に戻す)させることで、多くの好塩性酵素を産業的に実用化することが可能になります。また、新たな機能を付加した好塩性酵素を作る分子育種技術を確立する基礎的研究にもなります。 ●<対応可能な技術相談分野など>・有用微生物の探索・微生物による有用タンパク質の発現生産・タンパク質精製・微生物・酵素の利用と遺伝子工学 好塩性酵素に着目して産業活用の方法を研究。食品、洗剤、医薬品など酵素を使っている企業との技術協力、共同研究が可能です。好塩性酵素の特殊能力の実用化に成功すれば、新機能の商品開発にも結び付くと考えられます。
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