哲学 哲学 フランス現代哲学 エピステモロジー 技術論 技術というと、自然と対立するもの、人間を守るものとして考えられがちです。じっさい、何も持たずに自然のなかに放り出された人間が生き延びるのはかなり難しいでしょう。ほかの生物に比べてか弱い人間は、技術によって自然を切り拓き、科学によってこれを征服してきました。環境問題などを考えるとこの見方には一定の説得力がありますが、哲学や思想の分野では技術と自然の対立そのものが現在さまざまに問いなおされています。 ●ジルベール・シモンドンの研究個体化論と技術論で知られる20世紀フランスの哲学者ジルベール・シモンドンを扱う本邦初の博士論文を加筆・修正して『シモンドン哲学研究——関係の実在論の射程』(法政大学出版局、2021年)として書籍化しました。現在はとりわけその独特の技術論について研究を深めています。●生命論的な技術論の系譜シモンドンの技術論を評価するために、それが位置づけられるフランスの技術論の系譜についても調査をしています。結果的にその一環となったのがエマヌエーレ・コッチャ『メタモルフォーゼの哲学』(松葉類との共訳、勁草書房、2022年)の翻訳です。そこに見いだされる生命論的な技術論の着想については論文や講演でも取り上げています。 現代社会は科学技術なしには立ち行きません。科学技術についてあらためて考えてみることは、わたしたちが知らぬ間に抱いている価値観や社会の成り立ちについてあらたな視点をもたらすでしょう。そのきっかけとなる哲学的あるいは倫理学的な理論はさまざまありますが、そうしたなかでフランスのエピステモロジーと呼ばれる思想的な伝統は一風変わった観点を提供してくれるはずです。 ●19世紀フランスの作家ヴィリエ・ド・リラダンの長編小説『未来のイヴ』(1886年)の共同研究に参加しています。●『未来のイヴ』や『メタモルフォーゼの哲学』の一般向け講座も提供しています。 現在まで発展してきている科学や技術について、「生命論的な技術論」という哲学的視点から、人間を含むすべての生物が自然と科学技術との関係について問い直す興味深い研究である。
PDFファイル:19-Hu-usami-leh-SDGs14.pdf