ライフサイエンス 生理学 分子生物 薬理学 生物学 イオンチャネル カルシウムイオンチャネル カルモジュリン 細胞内情報伝達系 心臓病 心筋細胞のカルシウム(Ca2+)チャネルは、刺激に反応して開口し細胞内にCa2+シグナルを起こし、筋収縮や遺伝子発現などに関与します。Ca2+チャネルはカルモジュリン(*CaM)、ATP、酸化還元反応、pH、Ca2+、Mg2+、リン酸化などの細胞質因子に制御されています。心疾患には、これら細胞質因子の変化によるCa2+チャネル活性の異常に起因する心臓の機能障害や損傷があります。細胞質因子によるCa2+チャネルの調節機構を解明し、心疾患の予防および治療に役立つことが研究の目的です。*カルモジュリン(CaM):カルシウムに結合するタンパク質。細胞の様々な反応過程と関わり、細胞機能に影響を与える ATP:アデノシン三リン酸。体内に広く存在し、エネルギーや物資の代謝・合成に重要な役割を果たす 細胞質因子によるCa2+チャネルの調節機構を研究。細胞質因子はチャネルと相互作用し、チャネル活性を増大または阻害する。虚血性心疾患、特に虚血再灌流障害の場合、細胞質因子を介して起こるCa2+チャネルの異常が不整脈および心筋損害など致命的な結果を引き起こす。そのメカニズム解明に向け、3つのプロジェクトを進めている。1)心臓のCa2+チャネル活性の決定因子心臓のCa2+チャネルを通るCa2+の流入は、筋収縮および活動電位の形成において決定的な役割を果たす。我々は電気生理学および分子生物学の技術を用いてCa2+チャネル活性の決定因子を探索。ATPの存在下でCaMとCa2+チャネルとの相互作用がチャネル活性を決定することを発見した。これにより、Ca2+チャネルの研究を細胞膜のみのcell-free系で行うことが可能になった。2)Ca2+チャネル活性に対する細胞質因子の影響及びその機構心疾患は、ATP、Ca2+、pH、Mg2+、酸化還元、リン酸化などの細胞質因子の変化を引き起こし、それらの変化が心臓の損傷を加速し致命的な不整脈を起こす可能性がある。心臓Ca2+チャネルに対する細胞質因子の影響は実証されているが機序が明らかではない。我々は大部分の細胞質因子がチャネルとCaMの相互作用の変化を介してCa2+チャネルを変異させることを示した。 3)Ca2+チャネルに関する遺伝子心疾患の研究CaMまたはCa2+チャネルの変異はチャネル活性を増加または阻害することで心疾患を引き起こす。そのメカニズム探索のため電気生理学的および分子生物学的手法を用いて、チャネル活性およびチャネルとCaM相互作用に対する突然変異の影響を調べている。 この研究は遺伝性心疾患を理解し、効果的な治療法を検討するために重要である。 本研究室では神経や筋の細胞膜にあるイオンチャネルの仕組みの解明に取組んでいます。イオンチャネルは体内のカルシウムイオン等のイオンを細胞膜が通すための通路で、神経伝達や筋収縮に不可欠な存在です。心筋細胞のCa2+チャネルの開閉異常は、心臓のポンプ作用とリズムを悪化させます。我々は心臓Ca2+チャネルの調節を制御する細胞質因子、とくにカルモジュリンの影響とその作用機序を研究することで、心疾患の過程の解明や新規治療薬の探索につながる効果を期待しています。Ca2+イオンCa2+チャネルATPCa2+還元または酸化リン酸化Mg2+pHカルモジュリンCa2+ストアCa2+筋収縮遺伝子発現活動電位を調節心筋細胞 ●我々はパッチクランプ・インサイド-アウト法でCa2+チャネルを研究する方法を確立しました。この方法を用いると、細胞の内部から作用する因子または薬物の効果を調べることができます。 心臓のCaチャネルを制御する細胞質因子に注目。新規な発見もあります。チャネル開閉の作用機序を解明できれば、心疾患の新たな治療薬の開発にも繋がります。興味を持つ薬理学や臨床系研究者との連携を希望しています。
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