ライフサイエンス 放射線学 分子生物学 放射線被曝 放射線被曝 ハイドロキシアパタイト ESR 2011年の東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の原発事故で、大量の放射線が漏れ周辺住民が被曝しました。その外部測定線量分布については様々な報告がされていますが、内部被曝の線量測定は難しいため、放射線被曝状況についての情報等は少なく、特に小児における放射線被曝・汚染状況に関する情報はほとんどありません。本研究は福島県在住の小児脱落歯及び抜去歯のCO2ラジカル(*)をESR(*)で測定することにより、内部被曝の線量を測定することを目的としています。 外部被曝:体の外部にある放射線源からの放射線による被曝内部被曝:経口や吸引、傷口などから体内に入った放射線による被曝歯のエナメル質を構成するハイドロキシアパタイトの結晶中には、不純物の炭酸イオンが含まれています。炭酸イオンは放射線によってCO2-というラジカルを生成することが知られており、このラジカルは長期間安定していることから、電子スピン共鳴法(ESR)によって測定できます。この方法を用いて線量測定を試みる研究は、これまでにもいくつかの報告がなされていますが、高い放射線量を対象にした研究が主であり、100mSV以下といった比較的低線量におけるESRの測定はなされていません。我々は50mSV以下の線量測定を可能にした新規開発ESR法により、福島県在住の小児脱落歯及び抜去歯を用いて、実際の被曝線量を測定します。なお、この研究は下記の共同研究機関との連携により遂行されております。ラジカル:対をなさない電子を持つ原子のこと。分子が熱や放射線などの作用を受け、結合が切れることで生じ、一般的に不安定で反応性が高いESR:ラジカルの検出に用いられる測定法。 電子スピン共鳴装置(ESR)を用いて、歯のエナメル質から長寿命のC02-ラジカル量を測定することで、被曝線量の測定が可能になります。低放射線量の測定法を確立できるだけでなく、放射線の影響をも推測することが可能と考えられます。脱落歯および抜去歯を用いる被曝線量の測定という、体に負荷のない非侵襲的な方法で、原発事故による福島県在住の小児被曝の実態が明らかになることが期待できます。放射線疫学上、放射線生物学上も重要な資料となることは言うまでもありません。 ●「環境省公募研究事業」に採択され、以下の団体と共同研究しています。福島県立医科大学放射線医学講座、奥羽大学歯学部成長発育歯学講座、放射線医学総合研究所、鹿児島市の開業歯科医院、東北大学歯学部、福島県歯科医師会 抜けた歯のラジカル量で内部被曝の低い線量をも測定する手法を開発。東北と鹿児島の関係機関が連携して研究中です。原発事故による小児の内部被曝の実態が明らかになることで、今後の施策につながると期待できます。
PDFファイル:14-Ls-majima02-med.pdf