ライフサイエンス 宇宙環境医学 放射線学 分子生物学 宇宙放射線 神経細胞 宇宙放射線 活性酸素 ミトコンドリア 宇宙空間は強烈な宇宙放射線が飛び交い、重力も微小です。宇宙での長期滞在は人体にどんな影響を及ぼすのか。我々はヒトの神経細胞(Neuron)への宇宙放射線(Space Radiation)の影響を、遺伝子レベルで検証することを目的に研究を進めてきました。Neuro Rad実験といいます。2010年4月、ディスカバリーに搭載されたヒトの神経細胞は、国際宇宙ステーション(ISS)の実験棟『きぼう』で培養され、5月に回収、無事帰還しました。現在、回収されたサンプルについて解析中です。 地上で神経細胞を培養容器に入れ、生きたままの状態で打ち上げます。宇宙で37℃の培養装置で培養し、14日と28日間培養した後、細胞を化学的に処理してその状態を保ったまま保存し、冷凍して回収します。地上に帰ってきたサンプルは解凍して、遺伝子、タンパク質の解析などを行います。培養期間、重力等の条件が異なる8種のサンプルによって、宇宙放射線と微小重力の神経細胞への影響を解析して行きます。 (http://iss.jaxa.jp/library/video/spacenavi_wn100519.html(SPACE@NAVI-Kibo WEEKLY NEWS 第103号))(http://www.nasa.gov/mission_pages/station/science/experiments/NeuroRad.html)Neuro Rad 実験の実際 宇宙放射線の影響を調べるために、まずは体の司令塔の役割を果たす神経細胞のダメージを確認することが重要です。遺伝子レベルで網羅的に解析するとともに、細胞内の小器官「ミトコンドリア」の機能や活性酸素との関連についても調査します。研究成果は今後ヒトが宇宙で長期滞在を行うにあたり、宇宙放射線のリスクを理解し防御するために大いに役立つと考えられます。また宇宙という苛酷な条件への防御策は、ガンや生活習慣病等に対する予防や治療法へ応用できる可能性もあります。 ●宇宙航空研究開発機構(JAXA)、米航空宇宙局(NASA)との共同研究。『きぼう』での実験は野口聡一宇宙飛行士が担当しました。●細胞内でエネルギーを産出し、アポトーシス(*)も制御するミトコンドリアを研究しています。*細胞の損傷により害になる危険性があるとき、異常細胞が自ら消滅する仕組み 宇宙環境医学は世界的にもユニークな講座。宇宙ライフサイエンスへの長年の取り組みが、JAXA、NASAとの連携体制を育み、今回の宇宙実験を成功へと導きました。最先端の拠点として新たな研究を推進しています。
PDFファイル:13-Ls-majima01-med.pdf