水産物 水産流通学 水産物 水産物小売り ローカルSM 国産水産物 高付加価値販売 近年、国産水産物販売に注力することで売上げを伸ばしている地域密着型の食品スーパー(Super Market:以下SM)が注目を集めています。大手量販店とは一線を画して生き残りを図る販売戦略、そして美味しくて高鮮度な国産水産物の価値を正しく実現しうる小売り業態の条件とは何でしょうか。私たちは全国各地の優良SMにおける水産物取扱いの実態分析をもとに、水産物の高付加価値販売を実現するための条件を抽出しています。水産物小売りのあるべき姿を見通すことが本研究の目的です。 1。水産物小売市場の分析 かつて水産物販売の主役は季節性に富んだ多種多様な国産水産物を、顧客に説明しながら販売する鮮魚専門小売店でした。今や主要な流通チャネルは大手量販店。価格競争の結果、安価な輸入品や定番商品を中心とした売り場となっています。大手量販店では人件費削減のため、販売に説明を要する多様な国産水産物は扱われにくい状況もあり、水産物消費が減少する要因の一つにもなってきました。 ところが近年、生鮮小売りにおける大手量販店の勢力に陰りが見え始める一方で、地域に根差したローカルSMが勢いを取り戻しています。そうした水産物小売市場全体の状況を客観的に明らかにする分析を行っています。2。ローカルSMにおける水産物小売りの実態分析 優良SMは、顧客ニーズを反映した仕入れや売り場作り、すなわち「ローカルなマーチャンダイジング」を行っているのが特徴です。そのためにはSMが地元漁業の生産構造や消費性向を理解することが必要です。  私たちは全国各地の代表的な優良SMを調査対象とし、各企業の実態分析に基づき、主に水産物の調達・売り場作り・商品管理を明らかにしています。さらに企業の比較分析を行うことで、水産物小売りの現代的な特徴を明らかにし、国産水産物にとって重要な流通チャネルとしての小売り業態の将来を展望します。 水産物小売りの主力チャネルがSMであるにも関わらず、水産市場でのSMの知見は乏しかったのが現状です。これまでの研究の蓄積で、優良SMの多様な戦略が明らかになってきました。対面販売の強化、個店経営、地産地消及びPB商品開発による商品の差別化、加工機能強化による高付加価値化、漁業生産の垂直的統合、卸売市場との連携強化などがそれです。これらの企業行動をさらに分析することにより、国産水産物の高付加価値販売を実現する条件を明らかにできると考えています。 ●高付加価値販売の成功事例を分析。国内産地や漁業団体・企業などが、国産水産物の流通のあり方を模索される際にアドバイスが可能です。●小売り企業の経営資源および市場環境に応じた販売戦略の策定にご協力できます。 魚屋さん的販売手法等で成長する地域密着型食品スーパーに注目。その多様な経営戦略を収集・分析することで、国内水産物の高付加価値販売の条件を検討しています。魚消費の拡大や魚価向上への貢献も期待できます。
PDFファイル:12-Fd-kuga-fsh.pdf