電界紡糸法 電子材料 固体物性 薄膜工学 応用物理教育 電界紡糸法 セラミックス ナノファイバ 不織布 太陽電池 蓄電池 電界紡糸法(エレクトロスピニング法)は原料溶液をシリンジ(注射器)の中に入れ,注射針の先から押し出す際に強い電界の力で引っ張ることで,直径数十〜数百ナノメートルの非常に細いナノファイバとそれからなる不織布状の薄膜を作る技術です。すでに有機材料から作るナノファイバ不織布は、医療やフィルタなどに応用されています。我々の研究室では,この方法を用いて多彩なセラミックス材料によるナノファイバ不織布を作り,それらを電子材料等に応用する研究を行っています。 セラミックスナノファイバ(NF)不織布は,電界紡糸法でセラミックスの原料を含む高分子溶液でNF不織布を作り,高温で焼くことで作製できます。 右図・写真はスズドープ酸化インジウム(ITO)とシリカ(SiO2)の2種類のナノファイバを同時に回転させたコレクタで巻き取ることで,2種類のNFを混合させた不織布を得た例を示しています。ITOは液晶テレビやスマートフォンの電極にも使われている透明導電体で,シリカは光ファイバの材料にもなっています。不織布は直径100ナノメートルほどのナノファイバでできていて,直径3mmの棒に巻き付けても割れることはありません。このように異なる性質を持つセラミックスを組み合わせることで,電気も光も通すことが出来る,曲げられて燃えない「布」を作ることができるのです。 また,1つの原料液の周りに同時に別の種類の原料液を供給し,一緒に電界で引っ張ってナノファイバを作ることで,ナノファイバの表面を別のセラミックスでコーティングすることもできます。 我々の研究室では,コア(中心)に電気を流すことのできるITOナノファイバを用い,被覆層として絶縁セラミックスでコートして,ナノサイズの被覆導線を作り,曲げられる太陽電池に応用したり,リチウムイオンを蓄えることが出来るセラミックスで被覆することで,ナノサイズの曲げられる蓄電池の実現を目指したりしています。 セラミックスには半導体,超伝導体,誘電体,磁性体など様々な性質を持つものがあり,幅広い分野に応用されています。そのセラミックスをフレキシブルに曲げられるナノファイバの「布」にすることで,硬いセラミックスでは実現できなかった新しい電子素子を開発できると期待されます。また,ナノファイバにすることで表面積が格段に増えることから,汚染物質の吸着剤や光触媒としても優れた機能を発揮すると分かりました。化学や医療など幅広い分野への応用も期待できると考えています ●電界紡糸法でのセラミックスNF作製は難しく,作製例も多くありません。我々は長年の経験と多彩な作製例を持つ国内有数の研究室です。●太陽電池や蓄電池への応用は学会・論文で発表。紡糸装置メーカーとの情報交換も密に行っています。 セラミックスでナノファイバ不織布を作製し、電子材料に応用する研究を展開。光触媒・吸着剤の機能も確認済みです。柔軟なセラミックスは化学や医療等幅広い応用の可能性あり。企業・研究者からの提案をお待ちしています。
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