抗体断片及び該抗体断片を含む二重特異性抗体
国内特許コード | P210017737 |
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整理番号 | (S2018-0495-N0) |
掲載日 | 2021年5月27日 |
出願番号 | 特願2020-513417 |
出願日 | 平成31年4月9日(2019.4.9) |
国際出願番号 | JP2019015528 |
国際公開番号 | WO2019198731 |
国際出願日 | 平成31年4月9日(2019.4.9) |
国際公開日 | 令和元年10月17日(2019.10.17) |
優先権データ |
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発明者 |
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出願人 |
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発明の名称 |
抗体断片及び該抗体断片を含む二重特異性抗体
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発明の概要 |
ヒトHER2に特異的に結合する抗体断片は、下記式(1)の構造を有する単一ポリペプチド鎖のアミノ酸配列を有する。 FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4 … (1) (式中、FR1、FR2、FR3、及びFR4はフレームワーク領域であり、CDR1、CDR2、及びCDR3は相補性決定領域であり、以下の(I)~(III)の少なくとも一つを満たす: (I)CDR1は、配列番号5~11、53~55、及び59~64のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するか、配列番号5~11、53~55、及び59~64のいずれかで表されるアミノ酸配列において1から数個の欠失、置換若しくは付加を含むアミノ酸配列を有するか、又は配列番号5~11、53~55、及び59~64のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する (II)CDR2は配列番号12~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するか、配列番号12~18のいずれかで表されるアミノ酸配列において1から数個の欠失、置換若しくは付加を含むアミノ酸配列を有するか、又は配列番号12~18のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する (III)CDR3は配列番号19~25、56~58、及び65~84のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するか、配列番号19~25、56~58、及び65~84のいずれかで表されるアミノ酸配列において1から数個の欠失、置換若しくは付加を含むアミノ酸配列を有するか、又は配列番号19~25、56~58、及び65~84のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する。) |
従来技術、競合技術の概要 |
がん(悪性腫瘍)に対する安全な治療薬として、免疫療法が用いられている。がんに対する免疫療法では、がんに対して特異的に細胞傷害活性を示す抗体が使用されている。 Human epidermal growth factor Receptor 2 (HER2)は細胞表面に存在する糖蛋白質の受容体型チロシンキナーゼ (分子量 約 185kDa)であり、EGFR2,ErbB2,CD340,あるいは NEU とも呼ばれる。HER2はその変異型や欠損型も含めて乳癌をはじめとする複数のがんで過剰発現しており、治療標的として注目されている。HER2 を標的とした抗体は、標的化による治療効果が期待されるがん細胞表面抗原の一つである。 抗体の基本構造は、重鎖と軽鎖がジスルフィド結合によりヘテロテトラマーを形成したものであるが、このようなIgG型の抗体は高分子量であるため、腫瘍深部まで浸透することができない。このため、抗体の可変領域断片を含む低分子量の抗体の開発が進んでいる。 近年、Hamers-Casterman らはヒトコブラクダやラマなどのラマ科の動物において、CH1 ドメインを含まず重鎖のみからなる抗体が存在することを報告した(非特許文献1)。ラクダ由来抗体の可変領域断片(single Variable domain of the Heavy chain of a Heavy-chain camel antibody : VHH)は、単量体ドメインにもかかわらず、高親和性・高特異性を有している。そこで、ラマ科の動物の免疫化により取得した抗体群をライブラリーとしてファージ提示法等の生体外選択操作を行うことで種々の標的に特異的に結合するVHH が取得されている(非特許文献2, 3)。 一方で、抗原に対する親和性を高めるために、抗体を多量体化又は多価化する技術も知られている。例えばHarwood らは三量体形成ドメインとして知られる collagen XVIIItrimerization domain を抗CD3 scFv1 分子及び抗EGFR VHH 抗体3 分子と融合させることで、EGFR に対して三価の組換え抗体を設計し、かかる組換え抗体が同一ドメインから構成される一重一価の組換え抗体よりも高い傷害活性を発揮することを報告している (非特許文献4)。 従来のIgG型の抗体では、ナチュラルキラー細胞よりも活性の高いT細胞を利用することができず、T細胞を利用することができる低分子量の抗体は開発されているが、低分子であるため、細胞へ結合する価数が1であり、抗原との結合親和性が低い。 抗体と抗原の結合親和性増大は抗体の多価設計により傷害活性向上をもたらすため、有効なアプローチであるといえるが、重鎖と軽鎖間のリンカー配列の短縮化・除去による多価化設計は多価な会合体形成にある程度有効であるものの(非特許文献5, 6)、単一の多価会合体のみが形成されるような設計には至っていない。 |
産業上の利用分野 |
本発明は、抗体断片、該抗体断片を含む二重特異性抗体、該抗体断片又は該二重特異性抗体をコードする塩基配列を含む核酸分子、該抗体断片又は該二重特異性抗体を含む医薬組成物、及び該抗体断片又は該二重特異性抗体を含むキットに関する。 |
特許請求の範囲 |
【請求項1】 ヒトHER2に特異的に結合する抗体断片であって、下記式(1)の構造を有する単一ポリペプチド鎖のアミノ酸配列を有する抗体断片。 FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4 … (1) (式中、 FR1、FR2、FR3、及びFR4はフレームワーク領域であり、 CDR1、CDR2、及びCDR3は相補性決定領域であり、以下の(I)~(III)の少なくとも一つを満たす: (I)CDR1は、配列番号5~11、53~55、及び59~64のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するか、配列番号5~11、53~55、及び59~64のいずれかで表されるアミノ酸配列において1から数個の欠失、置換若しくは付加を含むアミノ酸配列を有するか、又は配列番号5~11、53~55、及び59~64のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する (II)CDR2は配列番号12~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するか、配列番号12~18のいずれかで表されるアミノ酸配列において1から数個の欠失、置換若しくは付加を含むアミノ酸配列を有するか、又は配列番号12~18のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する (III)CDR3は配列番号19~25、56~58、及び65~84のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するか、配列番号19~25、56~58、及び65~84のいずれかで表されるアミノ酸配列において1から数個の欠失、置換若しくは付加を含むアミノ酸配列を有するか、又は配列番号19~25、56~58、及び65~84のいずれかで表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する。) 【請求項2】 前記CDR1は配列番号5~11、53~55、及び59~64のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し、前記CDR2は配列番号12~18のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し、前記CDR3は配列番号19~25、56~58、及び65~84のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する請求項1に記載の抗体断片。 【請求項3】 下記(i)~(xii)のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を有する請求項1又は2に記載の抗体断片。 (i) CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号19 (ii) CDR1:配列番号6、CDR2:配列番号13、及びCDR3:配列番号20 (iii) CDR1:配列番号7、CDR2:配列番号14、及びCDR3:配列番号21 (iv) CDR1:配列番号8、CDR2:配列番号15、及びCDR3:配列番号22 (v) CDR1:配列番号9、CDR2:配列番号16、及びCDR3:配列番号23 (vi) CDR1:配列番号10、CDR2:配列番号17、及びCDR3:配列番号24 (vii) CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号18、及びCDR3:配列番号25 (viii) CDR1:配列番号53 (ix) CDR1:配列番号53、及びCDR3:配列番号57 (x) CDR1:配列番号54 (xi) CDR1:配列番号55 (xii) CDR3:配列番号58 【請求項4】 FR1、FR2、FR3、及びFR4は配列番号1~4で表されるアミノ酸配列を有するか、配列番号1~4で表されるアミノ酸配列において1から数個の欠失、置換若しくは付加を含むアミノ酸配列を有するか、又は配列番号1~4で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体断片。 【請求項5】 配列番号26~32のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体断片。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体断片からなる第1の可変領域と、HER2とは異なる抗原に特異的に結合する第2の可変領域とを備え、前記第1の可変領域と前記第2の可変領域が単一のポリペプチド鎖上に含まれる、二重特異性抗体。 【請求項7】 前記第2の可変領域が、T細胞上の抗原に特異的に結合する、請求項6に記載の二重特異性抗体。 【請求項8】 前記第2の可変領域が、抗CD3抗体の重鎖の可変領域と、抗CD3抗体の軽鎖の可変領域とを含む請求項7に記載の二重特異性抗体。 【請求項9】 単量体、二量体、三量体、四量体、五量体又はそれらのFc領域融合体である請求項6~8のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。 【請求項10】 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体断片又は請求項6~9のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、蛍光物質、発光物質、低分子化合物、核酸、放射性物質、薬剤、毒素、サイトカイン、アルブミン、酵素、及び非ペプチド性ポリマーからなる群の少なくとも1種の化合物とが結合されたコンジュゲート抗体。 【請求項11】 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体断片又は請求項6~9のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする塩基配列を含む核酸分子。 【請求項12】 請求項11に記載の核酸分子を含む発現ベクター。 【請求項13】 請求項12に記載の発現ベクターにより形質転換した宿主細胞。 【請求項14】 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体断片又は請求項6~9のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含有する医薬組成物。 【請求項15】 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体断片又は請求項6~9のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を備えたキット。 |
国際特許分類(IPC) |
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Fターム |
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出願権利状態 | 公開 |
『 抗体断片及び該抗体断片を含む二重特異性抗体』に関するお問合せ
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- URL: http://www.rpip.tohoku.ac.jp/jp/
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- Address: 〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-10
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