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安全を確保しながら転移性がんまで効果的に治療可能な、搭載する免疫誘導遺伝子の最適発現レベルを与える発現制御システムを有する腫瘍溶解性ウイルス(腫瘍溶解性免疫治療) NEW

国内特許コード P210017400
整理番号 (S2018-0284-N0)
掲載日 2021年1月27日
出願番号 特願2019-552379
出願日 平成30年11月8日(2018.11.8)
国際出願番号 JP2018041541
国際公開番号 WO2019093435
国際出願日 平成30年11月8日(2018.11.8)
国際公開日 令和元年5月16日(2019.5.16)
優先権データ
  • 特願2017-215579 (2017.11.8) JP
  • 特願2018-050722 (2018.3.19) JP
発明者
  • 小戝 健一郎
  • 伊地知 暢広
出願人
  • 国立大学法人鹿児島大学
発明の名称 安全を確保しながら転移性がんまで効果的に治療可能な、搭載する免疫誘導遺伝子の最適発現レベルを与える発現制御システムを有する腫瘍溶解性ウイルス(腫瘍溶解性免疫治療) NEW
発明の概要 本発明は、副作用なく最大の治療効果を誘導するための治療遺伝子の至適発現レベルを見出すという新規のコンセプトに基づき、高い安全性が確保されながら最適な治療効果を有する免疫ウイルス治療ベクターを開発することを目的とする。本発明は、E2Fプロモーター、又はこれと同等の活性を示すプロモーターの下流に機能的に連結された免疫誘導遺伝子を有し、かつ、少なくとも1つのウイルスの複製またはアッセンブリに必須の因子をコードする核酸のプロモーターが、臓器特異的に発現が亢進している因子のプロモーター、又はがん細胞特異的に発現が亢進している因子のプロモーターで置換されていることを特徴とする腫瘍溶解性ウイルス等を提供するものである。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要

「がん細胞で特異的にウイルスが増殖し殺傷効果を示す遺伝子組換えウイルス」である腫瘍溶解性ウイルス(Oncolytic virus)に免疫誘導遺伝子を搭載した腫瘍溶解性免疫治療法(Oncolytic immunotherapy)は、2015年末に欧米でサイトカイン遺伝子を搭載した(Amgen社のT-Vec)がFirst-in-class(画期的医薬品)として医薬承認されたように、世界的には革新的がん治療薬の最有力候補として期待されている(非特許文献1~非特許文献3)。

本発明者らは、遺伝子治療の黎明期である1990年代に、非増殖型ウイルスベクターによる免疫遺伝子の導入による、免疫遺伝子治療法を世界に先駆け開発している(非特許文献4~6)。その後、免疫遺伝子治療に関する多くの論文を発表しているように長年に渡り独自の研究開発を行ってきた。

また一方、本発明者らは、これまで腫瘍溶解性ウイルスの一つである制限増殖型アデノウイルス(Conditionally replicating adenovirus)に関して、ウイルスの増殖制御部、治療遺伝子、ウイルス特性の3つの要素を改変した、多因子で高度にがん細胞特異的にウイルス増殖制御して安全性を確保し、また治療効果を増強できる治療遺伝子も導入できる、次世代の制限増殖型アデノウイルスとなる、「多因子増殖制御型アデノウイルスm-CRA(Conditionally replicating adenovirus regulated with multiple-tumor specific factors)の効率的作製法を開発した(非特許文献7、特許文献1)。アデノウイルスはゲノムサイズが30-40kbの中型のウイルスではあるとはいえ遺伝子組み換えは容易ではなく、非増殖型アデノウイルスとは異なり、制限増殖型アデノウイルスの効率的な標準化作製技術さえも存在しなかった。よって、複数箇所を高度に遺伝子組換えしたm-CRAの開発や、さらに複数の候補m-CRAを作製してスクリーニング的に比較実験する研究も難しかった。よって本発明者らはまずm-CRA技術を開発することにより、この技術により初めて多くの候補m-CRAを作製して探索的に検証し、競合技術となる腫瘍溶解性ウイルスを遥かに凌ぐ医薬性能を持つm-CRA医薬を開発してきた。まずm-CRAの基本骨格となる、ウイルス増殖制御部の腫瘍特異的プロモーターでとしては、本発明でも使用しているサバイビン遺伝子のプロモーターでウイルス増殖制御するサバイビン反応性m-CRA(Surv.m-CRA)、あるいはオーロラキナーゼ遺伝子のプロモーターでウイルス増殖制御するオーロラキナーゼ反応性m-CRA(特許文献2)を開発した。Surv.m-CRAは、これまで最良の競合技術(Tertプロモーターでウイルス増殖されるCRA;基本骨格が同種のものは臨床試験で良好な結果が出されているためこれまで最良の競合技術の一つ;非特許文献8)よりも安全性と治療効果の両面ですぐれる(非特許文献9)という競合技術への優位性、既存の治療技術(抗がん剤、放射線治療)が無効のがん幹細胞も有効に治療できる(非特許文献10)という従来技術への優位性を示した。「治療遺伝子を搭載していない」Surv.m-CRAをSurv.m-CRA-1と命名し、これは非臨床試験でも安全性は確認され、現在、発明者らによりヒトがん患者さんで医師主導治験を実施しており、ヒトでも良好な結果が確認されつつある。Surv.m-CRA-1はがん細胞内でのみ特異的に、高効率にウイルス増殖することで、増幅したウイルスタンパク質によりがん細胞を特異的(安全)かつ効果的に治療する、腫瘍溶解性ウイルス治療薬である。

産業上の利用分野

本発明は、免疫誘導遺伝子を搭載した腫瘍溶解性ウイルスを利用したがん治療、いわゆる腫瘍溶解性免疫治療の分野に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
E2Fプロモーター(E2Fp)、又はこれと同等の活性を示すプロモーターの下流に機能的に連結された免疫誘導遺伝子を有する腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項2】
前記E2Fプロモーター(E2Fp)と同等の活性を示すプロモーターが、サバイビンプロモーター、AuroraキナーゼA遺伝子プロモーター、又はAuroraキナーゼB遺伝子プロモーターである、請求項1に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項3】
前記プロモーターが、E2Fプロモーター(E2Fp)、又はサバイビンプロモーターである、請求項1に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項4】
前記プロモーターが、E2Fプロモーター(E2Fp)である、請求項1に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項5】
前記免疫誘導遺伝子が、サイトカイン遺伝子である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項6】
前記サイトカイン遺伝子が、Activin A、ANGPTL5、BAFF、BD-2(β-Defensin-2)、BD-3(β-Defensin-3)、BDNF、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-10、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL3(MIP-1α)、CCL4(MIP-1β)、CCL5(RANTES)、CCL6、CCL7(MCP-3)、CCL8(MCP-2)、CCL9(MIP-1γ)、CCL11(Eotaxin-1)、CCL12(MCP-5)、CCL13(MCP-4)、CCL14、CCL15(MIP-1δ)、CCL16、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MIP-3β)、CCL20(MIP-3α)、CCL21(Exodus-2)、CCL22、CCL23、CCL24(Eotaxin-2)、CCL25(TECK)、CCL26(MIP-4α)、CCL27、CCL28、CO40-Ligand(TRAP)、CD137(4-1BB)-Ligand、CNTF、CT-1、CX3CL1(Fractalkine)、CXCL1(GRO1)、CXCL2(MIP-2α、GRO2)、CXCL3(MIP-2β、GRO3)、CXCL4(PF4)、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12(SDF-1α)、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、DKK-1、DLL1、EGFs、EG-VEGF(Prokineticin 1)、FasL、FGF-1(acidic FGF)、FGF-2(basic FGF)、FGF-3、FGF-4(HGBF-4)、FGF-5、FGF-6、FGF-7(KGF、HBGF-7)、FGF-8、FGF-9 (HBGF-9)、FGF-10 (KGF-2)、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23、Flt3-Ligand、Galectin-1、Galectin-3、G-CSF、GDF-11、GDNF、GM-CSF、HB-EGF、HGF、IFN-α2a、IFN-α2b、IFN-β1a、IFN-β1b、IFN-γ1b、IGF-1、IGF-2、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8(CXCL8)、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-34、IL-35、IL-36、IL-37、IL-38、LIF、M-CSF、MIF、NGF-β、Noggin、NT-3(NTF-3)、NT-4(NTF-4)、Oncostatin M、OPG(TNFRSF11B)、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、Pleiotrophin、Prolactin(Mammotropin)、RANKL、R-Spondin-1、R-Spondin-2、R-Spondin-3、SCF(c-kit Ligand)、SHH(C24II)、TGF-α、TGF-β1、TGF-β3、TNF-α、TNF-β、TPO(MDGF)、TRAIL、TSLP、VEGF、XCL1、及びXCL2からなる群から選択される1つのサイトカインの遺伝子である、請求項5に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項7】
前記サイトカイン遺伝子がGM-CSFである、請求項6に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項8】
更に、少なくとも1つのウイルスの複製またはアッセンブリに必須の因子をコードする核酸のプロモーターが、臓器特異的に発現が亢進している因子のプロモーター、又はがん細胞特異的に発現が亢進している因子のプロモーターで置換されていることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項9】
前記臓器特異的に発現が亢進している因子のプロモーターが、アルブミンプロモーター、α-フェトプロテインプロモーター、前立腺特異的抗原(PSA)プロモーター、ミトコンドリア型クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミエリン塩基性タンパク質(MB)プロモーター、グリア繊維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、及び神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターから選択されるプロモーターである、請求項8に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項10】
前記がん細胞特異的に発現が亢進している因子のプロモーターが、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)プロモーター、がん胎児性抗原(CEA)プロモーター、低酸素応答性領域(HRE)プロモーター、Grp78プロモーター、L-プラスチンプロモーター、ヘキソキナーゼIIプロモーター、サバイビンプロモーター、及びAuroraキナーゼプロモーターから選択されるプロモーターである、請求項8に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項11】
前記がん細胞特異的に発現が亢進している因子のプロモーターが、サバイビンプロモーター、ヒトAuroraキナーゼA遺伝子のプロモーター、又は、ヒトAuroraキナーゼB遺伝子のプロモーターである、請求項10に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項12】
前記がん細胞特異的に発現が亢進している因子のプロモーターが、サバイビンプロモーターである、請求項10に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項13】
アデノウイルスである、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項14】
少なくとも1つのウイルスの複製またはアッセンブリに必須の因子が、E1A、E1AΔ24、E1B、およびE1BΔ55Kから選択される因子である、請求項13に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項15】
少なくとも1つのウイルスの複製またはアッセンブリに必須の因子が、E1Aである、請求項13に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項16】
更に、細胞毒性因子または治療因子をコードする核酸と機能的に連結した、外来性プロモーターを含む発現カセットを包含する請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスを含有するがん治療剤。

【請求項18】
非標的細胞への傷害の少ないがんの治療方法において用いるための、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞へ投与することを含む方法。

【請求項19】
脾臓又は血清における前記サイトカインの量が、CAプロモーター又はRSVプロモーターの下流に機能的に連結された免疫誘導遺伝子を有する腫瘍溶解性ウイルスを投与した場合と比較して少ないことを特徴とする、サイトカインを発現する腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞へ投与することを含むがん治療方法において用いるための、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。

【請求項20】
脾臓における前記サイトカインの消失が、CAプロモーター又はRSVプロモーターの下流に機能的に連結された免疫誘導遺伝子を有する腫瘍溶解性ウイルスを投与した場合と比較して早いことを特徴とする、サイトカインを発現する腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞へ投与することを含むがん治療方法において用いるための、請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の腫瘍溶解性ウイルス。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 公開
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