抗肝腫瘍ウイルス剤
国内特許コード | P190015851 |
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整理番号 | (S2016-0463-N0) |
掲載日 | 2019年2月22日 |
出願番号 | 特願2018-504607 |
出願日 | 平成29年3月10日(2017.3.10) |
国際出願番号 | JP2017009674 |
国際公開番号 | WO2017155082 |
国際出願日 | 平成29年3月10日(2017.3.10) |
国際公開日 | 平成29年9月14日(2017.9.14) |
優先権データ |
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発明者 |
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出願人 |
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発明の名称 | 抗肝腫瘍ウイルス剤 |
発明の概要 |
本発明は、肝腫瘍ウイルスに対する新規治療剤を提供することを目的とし、具体的には、以下の一般式(I): [化1] (省略) (式中、R1は、フッ素又は水素である) で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、抗肝腫瘍ウイルス剤に関する。 |
従来技術、競合技術の概要 |
ウイルス感染症に対して、ジェンナーによる痘瘡のワクチン療法が発見されてから、感染予防が可能となった。しかし、ワクチンの存在しないウイルスについては、ウイルスが感染してしまうと個体の免疫による排除と、対症療法のみが選択肢となる。ウイルスに対する抗ウイルス剤開発の歴史は1977年のエリオンらによる単純ヘルペスウイルスの治療剤であるアシクロビルに始まる。1985年には満屋らによりヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)の治療剤であるアジドチミジンが発見された。抗ウイルス剤の開発は、HIV-1、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、インフルエンザウイルス等一部のウイルスでは進展しているが、ほとんどのウイルスでは未だ存在しないのが現状である。 HCV及びHBVは慢性肝炎、肝硬変、肝癌の原因となる肝腫瘍ウイルスである。HCV感染者は国内に約200万人、世界で約2億人と推定されている。HBV感染者は国内に約150万人、世界で約3.5億人と推定されている。HCVとHBVの感染者は世界人口の約8%に及び、克服すべき最も重要な感染症の1つとなっている。 HCVはフラビウイルス科へパシウイルス属に属する1本鎖のプラス鎖RNAをゲノムとするウイルスである。ウイルスゲノムは約9600ヌクレオチドであり、ウイルスの複製増殖は全て細胞質で行われる。ウイルスが細胞に侵入すると初めに、約3000アミノ酸残基から成る前駆体タンパク質が産生される。次に、宿主のタンパク質分解酵素とウイルスのタンパク質分解酵素により10種類の成熟したウイルスタンパク質が産生される。10種類のタンパク質のうち、E1、E2、Core、p7はウイルス粒子産生に必要な構造タンパク質である。NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5Bはウイルスの複製に必要な非構造タンパク質である。図1にHCVの生活環を示す。 HCVの生活環は、以下の通りである: 2)翻訳 3)複製 4)粒子形成 5)放出 以上のHCVの増殖は細胞質でのみ起こる。 臨床応用されているウイルスに直接作用するDirect-Acting Antivirals (DAAs)はウイルスのタンパク質分解酵素であるNS3-4A、ウイルスの複製・粒子形成に必要なNS5Aと、RNA依存性RNAポリメラーゼであるNS5Bを標的としている。C型慢性肝炎ではインターフェロン(IFN)単独療法が最初に実施されていたが、この時の有効性は約10%であった。2015年にはNS5Bの阻害剤とNS5Aの阻害剤を組み合わせた治療法が承認され、90%以上の有効性が報告されている。 一方、図2にHBVの生活環を示す。HBVはヘパドナウイルス科オルソヘパドナウイルス属に属する不完全2本鎖のDNAウイルスである。HBVは細胞内に侵入すると核で完全2本鎖DNAを形成し、cccDNAとなる。DNAを鋳型として3.6、2.4、2.1、0.7 kbのmRNAが転写されて、polymerase、HBcAg (Core)、HBsAg、Xタンパク質に翻訳される。3.6kbのpregenomic RNA(pgRNA)はCore、polymeraseと共にパッケージングされる。pgRNAがDNAに逆転写された後ウイルス粒子は細胞外に放出される。HBVはレトロウイルスではないがpolymeraseに逆転写活性があるために、その治療にはHIV-1に対する逆転写酵素阻害剤が使われている。 また、例えば、特許文献1は、2'-フルオロ-6'-メチレン炭素環ヌクレオシド類をHBV及びHCVの感染症の治療に使用することを開示する。しかしながら、特許文献1は、実際に行った抗ウイルス試験として抗HBV試験のみを開示し、2'-フルオロ-6'-メチレン炭素環ヌクレオシド類を使用して、HBV及びHCVの双方の感染症を治療できたことを示していない。 |
産業上の利用分野 |
本発明は、例えば肝腫瘍ウイルスに対する新規治療剤に関する。 |
特許請求の範囲 |
【請求項1】 以下の一般式(I): [化1] (省略) (式中、R1は、フッ素又は水素である) で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、抗肝腫瘍ウイルス剤。 【請求項2】 一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。 【請求項3】 一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがB型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。 【請求項4】 一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがB型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。 【請求項5】 一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。 【請求項6】 一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が2-クロロ-9-(2-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩であり、且つ肝腫瘍ウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤。 【請求項7】 請求項1記載の抗肝腫瘍ウイルス剤を含有する肝腫瘍ウイルス関連疾患予防又は治療剤であって、前記関連疾患が慢性肝炎、肝硬変及び肝癌から成る群より選択される、前記予防又は治療剤。 【請求項8】 2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がB型肝炎ウイルス及び/又はC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。 【請求項9】 2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がB型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。 【請求項10】 2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がB型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。 【請求項11】 2-クロロ-9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。 【請求項12】 2-クロロ-9-(2-デオキシ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン又はその薬学的に許容される塩である抗肝腫瘍ウイルス剤を含有し、且つ肝腫瘍ウイルス関連疾患がC型肝炎ウイルス関連疾患である、請求項7記載の予防又は治療剤。 |
国際特許分類(IPC) |
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Fターム |
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画像
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出願権利状態 | 公開 |
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