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新規D-アラビナン分解酵素

国内特許コード P190015881
整理番号 S2017-0900-N0
掲載日 2019年2月25日
出願番号 特願2017-141706
公開番号 特開2019-017358
出願日 平成29年7月21日(2017.7.21)
公開日 平成31年2月7日(2019.2.7)
発明者
  • 藤田 清貴
  • 隅田 泰生
出願人
  • 国立大学法人鹿児島大学
  • 株式会社スディックスバイオテック
発明の名称 新規D-アラビナン分解酵素
発明の概要 【課題】抗酸菌由来のLAMもしくはAGのD-アラビナン部位を分解しうる酵素を提供することを課題とする。
【解決手段】特定のアミノ酸配列の全部又は少なくともシグナル配列部分を除いた部分を含む一部からなり、且つ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質。又、特定のアミノ酸配列の全部又は一部からなり、且つ、エキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼ活性を有する組換えタンパク質。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要

結核は、ストレプトマイシンやリファンピシリンなどの抗結核薬の登場とBCG接種の普及により制圧できると考えられてきた。しかし、発展途上国において多剤耐性結核菌の感染が増加し、日本でも2万人を超える感染者が確認されている。このため、より強力な抗結核薬を求めて、新たに、細胞壁合成・タンパク質合成・DNA合成・ATP合成阻害剤の開発が進められている。この中で、ヒトが持たない結核菌細胞壁成分の中で、特にリポアラビノマンナン(LAM)と呼ばれる糖脂質が創薬の重要なターゲットの一つとし注目され、LAMの生合成経路の解明とその生合成を阻害する抗結核薬の開発が進められている。

LAMは、ホスファチジルイノシトール(PI)がマンナン鎖によって修飾された糖脂質であるリポマンナン(LM)に、D-アラビナン鎖と呼ばれるアラビノースによって修飾された構造を有する(図1)。なお、LAMに修飾されているアラビノースは、植物に見られるL体では無く、結核菌やらい菌などの抗酸菌特有のD体のフラノース型である。D-アラビナン鎖は、α1,5-結合のD-アラビノフラノース(D-Araf)で構成されたα1,5-D-アラビナン主鎖にα1,3-結合で分岐した枝分かれ構造を有している。さらにその非還元末端はβ1,2-結合のD-Arafとマンノースで修飾されている。また、抗酸菌の細胞壁を構成するアラビノガラクタン鎖(AG)もLAMと同様のD-アラビナン鎖で修飾されていることが知られている。なお、本明細書において「Ara」はアラビノースを表し、「f」はフラノース環構造を表す。

エンド-D-アラビナーゼとは、LAMやAGのD-アラビナン鎖に対してエンド型に作用しD-アラビノオリゴ糖を遊離させるとともに、LAMをLMに分解する酵素である。エンド-D-アラビナーゼに関する報告は、オーレオバクテリウム(Aureobacterium)に属するM2株(現在Microbacterium arabinogalactanolyticum NBRC14344として寄託されている)が分泌する天然型酵素(nEndo-MA)の存在が報告されている(非特許文献1)。また、その精製に関する報告が行われている(非特許文献2)。さらに、放線菌Cellulomonas属細菌からの精製に関するもの(非特許文献3)及び、非結核性抗酸菌Mycobacterium Smegmatisに菌体内酵素として存在していることを確認したものがある(非特許文献4)。しかしながら、現在までこれらのエンド-D-アラビナーゼのクローニング及び異種遺伝子発現に関する報告は行われていない。
一方、エキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼとは、エンド-D-アラビナーゼによって遊離されたα-D-アラビノオリゴ糖に対してエキソ型に作用しD-Araを遊離する酵素である。本酵素に関してはオーレオバクテリウムM2株が生産する酵素の精製に関する報告がある(非特許文献5)。しかし、現在までエキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼのクローニング及び異種遺伝子発現に関する報告は行われていない。なお、本明細書において酵素名の前に記載された「r」は組換えタンパク質であることを表し、「n」は天然型タンパク質であることを表す。

さらに、抗体作成の際に用いられる完全フロイトアジュバント(CFA:免疫動物内で抗原の放出を穏やかにすることで,強力でかつ長期間に渡り持続的な免疫応答を促進する薬剤)には加熱死菌の結核菌の類縁菌Mycobacterium butyricumが使用されている。CFAは免疫動物に炎症を引き起こす欠点があり、その代替品が必要とされている。既にLAMには免疫を活性化する能力があることが報告されており、LAMの免疫賦活能力を維持したまま低分子化することによる体内動態の最適化の可能性も指摘されている(非特許文献6)。また、LMにも免疫賦活能力があることが報告されている(非特許文献7)。エンド-D-アラビナーゼとエキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼはこの低分子化及びLAMのLMへ分解を行うことができる酵素である。しかし、先行技術文献のうち精製工程が記載されているのは非特許文献2と3と5があるが、ここに記載の方法では精製工程も煩雑であり、夾雑物を含まない精製酵素の大量調製は困難であるという問題があった。

産業上の利用分野

本発明は、新規D-アラビナン分解酵素であるエンド-D-アラビナーゼ及びエキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼ、及びそれらの用途に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)、(b)又は(c)の組換えタンパク質
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列の全部又は少なくともシグナル配列部分を除いた部分を含む一部からなる組換えタンパク質。
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質。
(c)配列番号2に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質。

【請求項2】
以下の(a)、(b)又は(c)の組換えDNA
(a)配列番号1に記載の塩基配列の全部又は少なくともシグナル配列部分を除いた部分を含む一部からなる組換えDNA。
(b)配列番号1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質をコードする組換えDNA。
(c)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質をコードする組換えDNA。

【請求項3】
以下の(a)、(b)又は(c)の組換えタンパク質
(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列の全部又は少なくともシグナル配列部分を除いた部分を含む一部からなる組換えタンパク質。
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質。
(c)配列番号4に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質。

【請求項4】
以下の(a)、(b)又は(c)の組換えDNA
(a)配列番号3に記載の塩基配列の全部又は少なくともシグナル配列部分を除いた部分を含む一部からなる組換えDNA。
(b)配列番号3に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質をコードする組換えDNA。
(c)配列番号3に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、エンド-D-アラビナーゼ活性を有する組換えタンパク質をコードする組換えDNA。

【請求項5】
以下の(a)、(b)又は(c)の組換えタンパク質
(a)配列番号6に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からなる組換えタンパク質。
(b)配列番号6に記載のアミノ酸配列(a)において1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼ活性を有する組換えタンパク質。
(c)配列番号6に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質。

【請求項6】
以下の(a)、(b)又は(c)の組換えDNA
(a)配列番号5に記載の塩基配列の全部又は一部からなる組換えDNA。
(b)配列番号5に記載の塩基配列と相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、エキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼ活性を有する組換えタンパク質をコードする組換えDNA。
(c)配列番号5に記載の塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、エキソ-α-D-アラビノフラノシダーゼ活性を有する組換えタンパク質をコードする組換えDNA。

【請求項7】
請求項1又は3又は5に記載の組換えタンパク質を単独でもしくは複数組み合わせて抗酸菌由来のリポアラビノマンナンやアラビノガラクタンを含む原料に作用させる工程を含む、D-アラビノースで構成されたD-アラビノオリゴ糖及びリポマンナン及びガラクタンの製造方法。

【請求項8】
請求項1又は3又は5に記載の組換えタンパク質を単独でもしくは複数組み合わせて抗酸菌由来のリポアラビノマンナンやアラビノガラクタンを含む原料に作用させる工程を含む、リポアラビノマンナンやアラビノガラクタンの解析又は検出方法。

【請求項9】
請求項2又は4又は6に記載の組換えDNAを含むベクター。

【請求項10】
請求項9に記載のベクターにより形質転換された形質転換体。

【請求項11】
請求項10に記載の形質転換体を用いることを特徴とする、請求項1又は3又は5に記載の組換えタンパク質を製造する方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 公開
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