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安定性が増加したウミシイタケ(Renillareniformis)由来ルシフェラーゼ変異体

国内特許コード P160013154
整理番号 (S2015-0063-N0)
掲載日 2016年8月4日
出願番号 特願2015-210963
公開番号 特開2016-082975
出願日 平成27年10月27日(2015.10.27)
公開日 平成28年5月19日(2016.5.19)
優先権データ
  • 特願2014-218511 (2014.10.27) JP
発明者
  • 石橋 松二郎
  • 徳永 正雄
出願人
  • 国立大学法人鹿児島大学
発明の名称 安定性が増加したウミシイタケ(Renillareniformis)由来ルシフェラーゼ変異体
発明の概要 【課題】熱安定性及び有機溶媒耐性が向上したルシフェラーゼ変異体を提供する。
【解決手段】ウミシイタケ(レニラ・レニホルミス;Renilla reniformis)由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列において、特定のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列から成り、且つ野生型ルシフェラーゼと比較して高い熱安定性及び有機溶媒耐性を有する、ルシフェラーゼ変異体。
【選択図】図2
従来技術、競合技術の概要

ウミシイタケ(レニラ・レニホルミス;Renilla reniformis)由来ルシフェラーゼ(以下、「Rluc」と称する)は、分子量約36kDaの単量体タンパク質であり、in vitroにおいて基質セレンテラジン(coelenterazine)と酸素存在下で反応し、その際に青色の発光(480nm)を生じる。Rlucは、主にバイオイメージングのために、又はレポータータンパク質として広く用いられている。

ところで、バイオイメージングは、生きた細胞内でタンパク質間相互作用やタンパク質の構造変化を、高感度且つ定量的に測定することが可能である。生体イメージングの利点は、生体を解剖することなく生体内の状況を把握できることである。その為、基礎から臨床医学に至るまで幅広い分野で使われている。特に、分子イメージングは生命現象を理解する上で重要であると認識されている。

また、癌細胞等のある細胞環境下で転写反応が正に制御されていることを確認する手段の1つとして、レポーター遺伝子アッセイが広く利用されている。レポーター遺伝子アッセイでは、転写調節領域の下流に特定の遺伝子配列(レポーター遺伝子配列)を導入したプラスミドを細胞に導入し、その遺伝子の産物であるタンパク質(レポータータンパク質)の発光を検出することで転写調節領域の活性を測定することができる。

従来において、上述のバイオイメージングのために、又はレポータータンパク質として最も使われているオワンクラゲ由来緑色蛍光タンパク質(GFP)は感度に優れている。しかしながら、発光に組織外から励起光を当てる必要があり、GFPは500 nm以下の励起光を当て続けなければならないため、生きた細胞にダメージを与える可能性がある。一方、Rlucの基質であるセレンテラジンは細胞透過性を有するため、細胞外からの投入が可能で有り、また細胞に対する毒性も少ない。さらに、ルシフェラーゼの発光は酵素反応によるものなので、バックグラウンドが低く定量性が高い。

また、現在最も使われているルシフェラーゼはホタル由来ルシフェラーゼである。しかしながら、Rlucは、ホタル由来ルシフェラーゼと比較して分子量が約0.6倍と小さく、また反応にATPを必要としないため、ホタル由来ルシフェラーゼよりもレポーターアッセイには最適である。一方で、Rlucは、熱に対して不安定なため、長時間のレポーターアッセイや臨床試薬として保存する際に失活しやすいという欠点を有する。

また、レポーターアッセイ等の際に、細胞を溶解するためのバッファーには、有機溶剤や界面活性剤が含まれている。さらに、Rlucの基質セレンテラジンは有機溶媒に溶解する必要がある。長時間のアッセイには高濃度の基質を必要とするため、高濃度の有機溶媒を必要とする。この有機溶媒はホタル由来ルシフェラーゼやRluc活性に大きく影響する。

例えば、特許文献1は、ホタルルシフェラーゼに由来する熱安定性ルシフェラーゼ変異体を開示する。しかしながら、特許文献1は、Rluc由来の熱安定性又は有機溶媒耐性ルシフェラーゼ変異体を記載していない。

産業上の利用分野

本発明は、例えば熱安定性及び有機溶媒耐性が向上したルシフェラーゼ変異体に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)又は(b)のタンパク質から成るルシフェラーゼ変異体。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、第75番目のイソロイシン、第116番目のフェニルアラニン、第137番目のイソロイシン、第178番目のアスパラギン、第264番目のアスパラギン及び第287番目のセリンから成る群より選択される1以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列から成るタンパク質;
(b)(a)記載のタンパク質のアミノ酸配列において、第75番目、第116番目、第137番目、第178番目、第264番目及び第287番目のアミノ酸から成る群より選択される1以上のアミノ酸以外の位置で、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列から成るタンパク質であって、ルシフェラーゼ活性を有し、且つ配列番号2に示されるアミノ酸配列から成るタンパク質と比較して高い熱安定性及び有機溶媒耐性を有する、前記タンパク質。

【請求項2】
以下の(A)~(F)の1以上のアミノ酸置換を含む、請求項1記載のルシフェラーゼ変異体。
(A)第75番目のイソロイシンからアラニンへの置換;
(B)第116番目のフェニルアラニンからロイシンへの置換;
(C)第137番目のイソロイシンからバリンへの置換;
(D)第178番目のアスパラギンからアスパラギン酸への置換;
(E)第264番目のアスパラギンからセリンへの置換;
(F)第287番目のセリンからプロリンへの置換。

【請求項3】
(A)~(F)の全てのアミノ酸置換を含む、請求項2記載のルシフェラーゼ変異体。

【請求項4】
有機溶媒が-1.47~1.29のlog Powを有する有機溶媒である、請求項1~3のいずれか1項記載のルシフェラーゼ変異体。

【請求項5】
有機溶媒が、酢酸エチル、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、2-プロパノール、ジメチルホルムアミド、ビスエーテル、1,2-ジメトキシエタン、DMSO、ジエチレングリコール及びエチレングリコールから成る群より選択される、請求項4記載のルシフェラーゼ変異体。

【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載のルシフェラーゼ変異体をコードする遺伝子。

【請求項7】
請求項6記載の遺伝子を含む組換えベクター。

【請求項8】
請求項7記載の組換えベクターを有する形質転換体。

【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項記載のルシフェラーゼ変異体、請求項6記載の遺伝子、請求項7記載の組換えベクター及び請求項8記載の形質転換体から成る群より選択される構成成分を含む、ルシフェラーゼアッセイキット。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 公開
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