TOP > 国内特許検索 > 遺伝性疾患の検出方法

遺伝性疾患の検出方法

国内特許コード P170014365
整理番号 S2014-0866-N0
掲載日 2017年6月30日
出願番号 特願2014-093044
公開番号 特開2015-208295
登録番号 特許第6378529号
出願日 平成26年4月28日(2014.4.28)
公開日 平成27年11月24日(2015.11.24)
登録日 平成30年8月3日(2018.8.3)
発明者
  • ▲高▼嶋 博
  • 樋口 雄二郎
  • 橋口 昭大
  • 吉村 明子
出願人
  • 国立大学法人鹿児島大学
発明の名称 遺伝性疾患の検出方法
発明の概要 【課題】本発明は遺伝的疾患の検出方法に関し、具体的には、常染色体劣性遺伝型のシャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease:CMT)の疾患原因遺伝子の検出に関する。
【解決手段】本発明の方法は、生物学的サンプルにおけるMME(膜結合性金属エンドプロテイナーゼ:membrane metallo-endopeptidase)遺伝子、FAT3(FAT腫瘍抑制ホモログ:FAT tumor suppressor homolog 3)遺伝子、および/またはSELRC1(Sel1 repeat containing 1)遺伝子の変異を検出することを特徴とする。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要

シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は遺伝性運動感覚性ニューロパチー(Hereditary Motor Sensory Neuropathy:HMSN)とも表現され、遺伝性ニューロパチーの中でもっとも代表的な遺伝性疾患である。臨床的には、四肢遠位筋優位の進行性筋力低下、足変形、感覚障害、深部腱反射の低下もしくは消失などを特徴とする。

臨床遺伝学的には、常染色体優性遺伝形式でミエリンの障害が原因の脱髄型のものはCMT1、軸索の障害が原因のものはCMT2と分類され、常染色体劣性遺伝形式でミエリンの障害が原因の脱髄型のものはCMT4 (AR-CMT1)、軸索の障害が原因のものはAR-CMT2、そしてX染色体性のものはCMTXと分類される。脱髄型か軸索型かは、正中神経運動神経伝導速度(MCV)38m/secを境に決定することができる。

また、脱髄型は臨床的に発症年齢や重症度でも分類され、先天性でフロッピーインファント(floppy infant)を呈する最重症型は先天性低髄鞘形成型ニューロパチー(Congenital hypomyelinating neuropathy:CHN)、生後から幼少時期(通常2歳以下)に発症するものはデジェリン・ソッタス病(Dejerine-Sottas syndrome:DSS)に分類される。更に、脱髄型と軸索型の中間的なMCVを呈する症例については中間型と呼ばれている。すなわち、CMTは遺伝的にも臨床的にも多様性のある疾患である。

1991年にLupskiらがPMP22遺伝子の重複をCMT1Aの原因として報告して以来、これまでに少なくとも40以上のCMT原因遺伝子が報告され、例えばCMT4の原因遺伝子の1つとして、FIG4遺伝子が報告されている(特許文献1)。CMT近縁疾患である遺伝性運動性ニューロパチー(hereditary motor neuropathy:HMN)や遺伝性感覚性ニューロパチー(hereditary sensory neuropathy:HSN)、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパチー(hereditary sensory and autonomic neuropathy:HSAN)を合わせると、その原因遺伝子の数は65以上にのぼっている。そして、現在報告されているCMT原因遺伝子がコードするタンパク質は、(i)ミエリン構成タンパク質、(ii)ミエリン関連タンパク質転写因子、(iii)ミエリン関連タンパク質の輸送・代謝・処理、(iv)細胞分化・維持、(v)ニューロフィラメント・タンパク質輸送関連、(vi)ミトコンドリア関連、(vii)DNA修復・転写・核酸合成、(viii)イオンチャネル、(iv)アミノアシルtRNA合成酵素など、機能においても多岐にわたることが知られている。

現在、CMT1Aの指標となるPMP22遺伝子の重複検査は、日本においては保険適応によって行われている。その他の既知原因遺伝子の一部についても、米国のAthena diagnostics社で商業的に遺伝子検査が提供されており、日本においても鹿児島大学で検査が行われている。

一方、2005年以降、次世代ゲノムシークエンス(Next-Generation Sequencing:NGS)技術によるゲノム解析技術の進歩とともに、より高速で低コストに遺伝子解析が可能となった。2010年にエクソーム解析により初めてメンデル遺伝性疾患の原因遺伝子が同定されて以来、数多くのヒト遺伝性疾患の病的変異が同定されるようになり、CMTに関しても新しい原因遺伝子が発見されてきている(非特許文献1~4)。

産業上の利用分野

本発明は遺伝性疾患の検出方法に関し、具体的には、常染色体劣性遺伝型のシャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease:CMT)の疾患原因遺伝子の検出に関する。

なお、本発明に関わる研究は鹿児島大学医学部倫理委員会の審査による承認を経て行われており、遺伝子検査を実施したすべての患者およびそれらの家族に対し、本研究に参加するためにインフォームドコンセントを行い、書面にて同意を得ている。

特許請求の範囲 【請求項1】
生物学的サンプルにおけるMME(膜結合性金属エンドプロテイナーゼ:membrane metallo-endopeptidase)遺伝子、SELRC1(Sel1 repeat containing 1)遺伝子、および/またはFAT3(FAT腫瘍抑制ホモログ:FAT tumor suppressor homolog 3)遺伝子の変異を検出することを特徴とする、常染色体劣性遺伝型シャルコー・マリー・トゥース病の診断のためのデータを取得する方法。

【請求項2】
生物学的サンプル中のDNAにおける変異を検出することを特徴とする、シャルコー・マリー・トゥース病の診断のためのデータを取得する方法であって、変異が配列番号1、3または5で示されるヌクレオチド配列における1以上の変異である、上記方法。

【請求項3】
変異がミスセンス変異、ナンセンス変異、およびフレームシフト変異のいずれかの非同義変異である、請求項1または2記載の方法。

【請求項4】
サンプル中のMME遺伝子のヌクレオチド配列を決定し、
該配列を配列番号1で示されるヌクレオチド配列と比較し、
変異の存在の有無を決定することを含む、
シャルコー・マリー・トゥース病の診断のためのデータを取得する方法。

【請求項5】
変異がMME遺伝子のエクソン7-8間のスプライス供与部位の変異(c.654+1G>A)(配列番号1における37341位のグアニンからアデニンへの変異)、エクソン8上のナンセンス変異(c.661C>T, p.Q221X)(配列番号1における39106位のシトシンからチミンへの変異、配列番号2における221位のグルタミン残基から終止コドンへの変異)、エクソン19上のミスセンス変異(c.1861T>C, p.C621R)(配列番号1における88926位のチミンからシトシンへの変異、配列番号2における621位のシステイン残基からアルギニン残基への変異)の1以上である、請求項4記載の方法。

【請求項6】
サンプル中のFAT3遺伝子のヌクレオチド配列を決定し、
該配列を配列番号3で示されるヌクレオチド配列と比較し、
変異の存在の有無を決定することを含む、
シャルコー・マリー・トゥース病の診断のためのデータを取得する方法。

【請求項7】
変異がFAT3遺伝子のエクソン9上のミスセンス変異(c.6122C>A, p.P2041H)(配列番号3における484856位のシトシンからアデニンへの変異、配列番号4における2041位のプロリン残基からヒスチジン残基への変異)、エクソン18上のミスセンス変異(c.11327G>A, p.C3776Y)(配列番号3における530415位のグアニンからアデニンへの変異、配列番号4における3776位のシステイン残基からチロシン残基への変異)の1以上である、請求項6記載の方法。

【請求項8】
サンプル中のSELRC1遺伝子のヌクレオチド配列を決定し、
該配列を配列番号5で示されるヌクレオチド配列と比較し、
変異の存在の有無を決定することを含む、
シャルコー・マリー・トゥース病の診断のためのデータを取得する方法。

【請求項9】
変異がSELRC1遺伝子のエクソン2上のミスセンス変異(c.115C>T, p.R39W)(配列番号5における5508位のシトシンのチミンへの変異、配列番号6の39位のアルギニン残基のトリプトファン残基への変異)、エクソン1上のミスセンス変異(c.17A>G, p.D6G)(配列番号5の57位のアデニンのグアニンへの変異、配列番号6における6位のアスパラギン酸残基のグリシン残基への変異)の1以上である、請求項8記載の方法。

【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項記載の方法において使用するためのプライマーまたはプローブであって、MME遺伝子、SELRC1遺伝子、および/またはFAT3遺伝子の翻訳領域およびスプライス部位の変異を検出可能な20~25個のヌクレオチド配列を有するプライマーまたはプローブ。

【請求項11】
MME遺伝子、SELRC1遺伝子、および/またはFAT3遺伝子の翻訳領域およびスプライス部位の変異を検出可能なプローブを含む、請求項1~9のいずれか1項記載の方法において使用するためのDNAチップ。

【請求項12】
請求項10記載のプライマーもしくはプローブ、または請求項11記載のDNAチップを含む、請求項1~9のいずれか1項記載の方法において使用するための、生物学的サンプル中のMME、FAT3、および/またはSELRC1遺伝子の変異を検出するためのキット。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
特許の内容に興味を持たれた方、ライセンスをご希望の方は、下記「問合せ先」までお問い合わせください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close