TOP > 国内特許検索 > IgA結合性ペプチド及びそれによるIgAの精製

IgA結合性ペプチド及びそれによるIgAの精製

国内特許コード P150012542
整理番号 (S2012-0160-N0)
掲載日 2015年11月19日
出願番号 特願2013-547203
登録番号 特許第6103772号
出願日 平成24年11月29日(2012.11.29)
登録日 平成29年3月10日(2017.3.10)
国際出願番号 JP2012080875
国際公開番号 WO2013081037
国際出願日 平成24年11月29日(2012.11.29)
国際公開日 平成25年6月6日(2013.6.6)
優先権データ
  • 特願2011-262871 (2011.11.30) JP
発明者
  • 伊東 祐二
  • 伊東 治
  • 大薗 慎二
  • 石飛 宏幸
出願人
  • 国立大学法人鹿児島大学
発明の名称 IgA結合性ペプチド及びそれによるIgAの精製
発明の概要 H-(X)-V-C-L-S-Y-R-(X)-(X)-G-(X)-P-(X)-C-(X)-(X)-(X)(I) (配列番号1)(式中、Xの各々は独立的に、以下より選択される:Xは、Gln残基又はMet残基であり、X及びXは、独立的にCys以外の任意のアミノ酸残基であるか、あるいはそのいずれか一方又は両方が欠失しており、Xは、Arg残基又はGln残基であり、Xは、Val残基又はThr残基であり、Xは、Phe残基又はTyr残基であり、Xは、Ser残基又はnullであり、Xは、Leu残基、thr残基又はnullである[但し、XがMet残基である場合、Xは、Ser残基又はnullであり、Xは、nullとする])によって表される、14~18アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgAと結合可能であることを特徴とするペプチド、該ペプチドを使用するヒトIgAの分析又は精製方法。
従来技術、競合技術の概要

イムノグロブリンA(IgA)は、粘膜免疫においては重要な抗体であるだけでなく、血中ではイムノグロブリンG(IgG)についで2番目に主要な抗体のクラスであり、細菌やウイルス感染に対する防御に働いている。IgAには、二量体構造をもつ分泌型IgA(sIgA)と単量体構造のIgA(mIgA)が存在する。sIgAは、SS結合によるJoining chain(J-chain)を介した二量体構造をもち、粘液中に分泌されるが、mIgAの多くは、血液中に存在する。また、IgAには、主にヒンジ領域の長さが異なる2種類のサブタイプ、IgA1とIgA2が存在し、IgA2ではProリッチな13残基の領域が欠如している。医薬品へ向けたIgAの機能は、感染免疫における重要性から、粘膜ワクチンの開発において焦点が絞られてきたが(非特許文献1及び2)、血液中のIgAは、特に好中球のサポートによる癌細胞に対するADCCが報告されている(非特許文献3及び4)ことから、癌や自己免疫疾患の治療薬としてその臨床応用が拡大している抗体医薬のフォーマットであるIgGと同様に、IgAもまた癌を標的にした抗体医薬として期待される(非特許文献5)。

しかし、IgAの医薬品への開発を妨げる要因の一つとして、IgG製造におけるプロテインA/Gアフィニティカラムのような工業的、製薬的なスケールで対応できる精製法が確立されていないことが挙げられる。従来、IgAの精製法としていくつかの方法が報告されている(非特許文献6)。例えば、IgA1特異的な糖鎖を認識するレクチンJacalin(非特許文献7)やProtein Aミメティック合成リガンドであるTG19318(非特許文献8)によるIgAの精製法が報告されているが、それらは結合能力や特異性における問題で利用には限界があった。また、Streptococcus細菌由来の表面タンパク質M protein family (非特許文献9)のメンバーから、IgA結合タンパク質が見出されたが(非特許文献10、11及び特許文献1)、IgG等の他の血清中のタンパク質との相互作用等(非特許文献12)が問題となり、IgA特異的な親和性リガンドとして使用するには障害があった。一方、Sandinらは、このStreptococcal Sir22 (M22) proteinの中の48残基からなるドメインペプチド(Streptococcal IgA-binding peptide, Sap)を取り出し、Cysを介したSS結合で二量体化することにより、元のSir22タンパク質より親和性(Kd値で3~4nM)は落ちるものの、比較的親和性の高い(Kd値で20nM)IgAの精製用アフィニティリガンドを報告した(非特許文献13)。実際にこのリガンドは、IgAのFcに結合し、sIgA、mIgA双方の精製、さらには抗原特異的なIgA1, IgA2モノクローナル抗体の検出への応用も可能であった。

上記のIgA結合タンパク質と同様に、IgGについても本発明者らによってIgG結合性ペプチドが開発されている(特許文献2)。しかし、IgG結合性ペプチドは、IgG特異的に結合するペプチドであるために、IgA結合性ペプチドとして利用する事はできず、またその特異性の違いから、IgAに特異的に結合するペプチドの開発には、IgG結合性ペプチドの開発とは全く別のアプローチが必要であった。

したがって、当該分野においてはIgAの精製または分析(検出又は定量)のための新たな技術が依然として切望されていた。

産業上の利用分野

本発明は、ランダムペプチドライブラリから得られたヒトIgA結合性ペプチド及び該ペプチドによるIgAの分析法又は精製法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式I:
H-(X1)-V-C-L-S-Y-R-(X2)-(X3)-G-(X4)-P-(X5)-C-(X6)-(X7)-(X8) (I) (配列番号1)
(式中、
Hはヒスチジン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Sはセリン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Pはプロリン残基であり、
Xの各々は独立的に、以下より選択される:
X1は、グルタミン残基又はメチオニン残基であり、
X2及びX3は、独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であるか、あるいはそのいずれか一方又は両方が欠失しており、
X4は、アルギニン残基又はグルタミン残基であり、
X5は、バリン残基又はトレオニン残基であり、
X6は、フェニルアラニン残基又はチロシン残基であり、
X7は、セリン残基又はnullであり、
X8は、ロイシン残基、トレオニン残基又はnullである
[但し、X1がメチオニン残基である場合、X7は、セリン残基又はnullであり、X8は、nullとする])
によって表される、14~18アミノ酸残基からなるアミノ酸配列からなり、かつヒトIgAと結合可能であることを特徴とするペプチド。

【請求項2】
下記の式II:
H-Q-V-C-L-S-Y-R-(X2)-(X3)-G-(X4)-P-(X5)-C-(X6)-S-(X8) (II) (配列番号2)
(式中、
Hはヒスチジン残基であり、
Qはグルタミン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Sはセリン残基であり、
Yはチロシン残基であり、
Rはアルギニン残基であり、
Gはグリシン残基であり、
Pはプロリン残基であり、
Fはフェニルアラニン残基であり、
Xの各々は独立的に、以下より選択される:
X2及びX3は、独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であるか、あるいはそのいずれか一方又は両方が欠失しており、
X4は、アルギニン残基又はグルタミン残基であり、
X5は、バリン残基又はトレオニン残基であり、
X6は、フェニルアラニン残基又はチロシン残基であり、
X8は、ロイシン残基、又はトレオニン残基である)
によって表される、16~18アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつヒトIgAと結合可能であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。

【請求項3】
以下のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1に記載のペプチド。
HMVCLSYRGRPVCF (配列番号3)
HMVCLSYRGRPVCFS (配列番号4)

【請求項4】
以下1)~8)のいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1又は2に記載のペプチド。
1) HQVCLSYRGRPVCFSL (配列番号5)
2) HQVCLSYRGQPVCFSL (配列番号6)
3) HQVCLSYRGRPTCFSL (配列番号7)
4) HQVCLSYRGRPVCYSL (配列番号8)
5) HQVCLSYRGRPVCFST (配列番号9)
6) HQVCLSYRGQPVCFST (配列番号10)
7) HQVCLSYRGRPTCFST (配列番号11)
8) HQVCLSYRGQPTCFST (配列番号12)

【請求項5】
ペプチドが2つのシステイン(C)残基間でジスルフィド結合を形成している、請求項1~4のいずれか1項に記載のペプチド。

【請求項6】
IgAの血清型(単量体)及び分泌型(二量体)に結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチド。

【請求項7】
標識が結合されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチド。

【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチドと連結されたタンパク質からなる融合タンパク質。

【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチドを固相に結合してなる固定化ペプチド。

【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。

【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項9に記載の固定化ペプチドをIgAと結合させること、並びに、結合したIgAを遊離させてIgAを回収することを含む、IgAの精製方法。

【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項9に記載の固定化ペプチドにサンプル中のIgAを結合させ、結合したIgAを検出することを含む、IgAの検出方法。

【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチド又は請求項9に記載の固定化ペプチドの少なくとも1種を含む、ヒトIgAの分析又は精製のためのキット。

【請求項14】
請求項9に記載の固定化ペプチドを含有する、IgA分離用カラム。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2013547203thum.jpg
出願権利状態 登録
特許の内容に興味を持たれた方、ライセンスをご希望の方は、下記「問合せ先」までお問い合わせください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close