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抗炎症剤または抗炎症作用を有する飲食品

国内特許コード P120007045
整理番号 11P029
掲載日 2012年3月26日
出願番号 特願2011-218833
公開番号 特開2012-021020
登録番号 特許第5424424号
出願日 平成23年10月3日(2011.10.3)
公開日 平成24年2月2日(2012.2.2)
登録日 平成25年12月6日(2013.12.6)
発明者
  • 侯 徳興
  • 橋本 文雄
出願人
  • 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 抗炎症剤または抗炎症作用を有する飲食品
発明の概要 【課題】茶化合物を用いた、COX-2阻害及び/又はPGE2生合成阻害の作用を有す
る飲食品又は医薬品を提供することを目的とする。
【解決手段】緑茶、烏龍茶、紅茶から分離された40種類の茶化合物を供試し、慢性炎症
に引き起こす酵素COX-2およびその産物であるPGE2を標的として鋭意研究を行っ
た結果、18種類の茶化合物がCOX-2の発現及び/又はPGE2の産生を抑制するこ
とを見出した。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


プロスタグランジン(prostaglandin)は、ヒト生体部位の器官、組織に
炎症を起こす生理活性物質である。中でも特に、PGE2は、肺癌、乳癌、大腸癌、前立
腺癌などを誘発する物質であることが知られている。プロスタグランジン類は、アラキド
ン酸(arachidonic acid)を前駆物質として、シクロオキシゲナーゼ(
cyclooxygenase;COX)の酵素によって生合成される。



COXには3種類あることが知られている。これらの内、ひとつは各種臓器に存在し、
消化液の分泌や利尿、血小板を凝集させるなど、恒常的に働くシクロオキシゲナーゼ-1
(cyclooxygenase-1;COX-1)である。一つは、炎症性のサイトカ
インや活性酸素に刺激を受けて誘導される、COX-2である。



COX-2はプロスタグランジンH合成酵素であり、アラキドン酸カスケード中最終
的にPGE2の生合成に関与する酵素として知られている。例えば、炎症性のサイトカイ
ンである腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor α;TNFα
)の刺激を受け、転写因子であるNF-κB(necrosis factor κB;
NFκB)が活性化され、この活性化によってCOX-2が発現する。COX-2の発現
によってPGE2の生合成が亢進し、癌細胞は増殖する上に、抗癌剤などに対しても抵抗
性を有するようになる。ヒト生体内のこの生合成カスケード中のどの部分を抑えることが
できるか、癌の治療や予防薬を開発する上で目標となることが示されている。



COX-2の発現を抑える効果のあるものは、COX-2阻害剤と呼ばれている。CO
X-2阻害剤の一例として、セレブレックス(Celebrex)の記載がある。「血液
腫瘍や上皮性腫瘍の増殖抑制において、COX阻害剤の中で最も強力な活性を示す」とい
う記載がある(非特許文献1、Waskewich,C.et.al.:Cancer
Res.、62:2029-2033)。



ポリフェノールは、タンパク質やアルカロイド等と結合し、難溶化の傾向を示す多価フ
ェノール類の総称である(非特許文献2、川崎敏男、他:天然薬物化学、廣川書店、19
86年4月:124)。中でも茶葉に含まれるポリフェノール(通称茶ポリフェノール)
には、多くの生物活性のあることが報告された。例えば、抗酸化作用(非特許文献3、H
ashimoto、F.et al.:Biosci.Biotechnol.Bioc
hem.、67:396-401、2003)、抗HIV作用(非特許文献4、Hash
imoto、F.et al.:Bioorg.Med.Chem.Lett.、6:6
95-700、1996)、抗アレルギー作用(非特許文献5、Yamada、K.et
al.:Food Sci.Technol.Res.、5:1-8、1999)、抗
トポイソメラーゼI及びII作用(非特許文献6、Suzuki、K.et al.:B
iol.Pharm.Bull.、24:1088-1090、2001)、抗癌作用(
非特許文献7、中村好志:茶の抗突然変異・抗癌作用、朝倉書店、1997年9月:13
1-143)、リパーゼ活性阻害作用(非特許文献8、Nakai、M.et al.:
J.Agri.Food Chem.、53:4593-4598、2005)、の報告
がある。



茶ポリフェノールは、緑茶、紅茶、烏龍茶、黒(プーアル)茶から単離され、70種以
上ものポリフェノール類が含有されていることが知られている(非特許文献9、橋本文雄
:各種茶のポリフェノールに関する化学的研究、1988年2月:68-72、147-
151、162-164;非特許文献10、Hashimoto、F.et al.:C
hem.Pharm.Bull.、35:611-616、1987;非特許文献11、
Hashimoto、F.et al.:Chem.Pharm.Bull.、36:1
676-1684、1988;非特許文献12、Hashimoto、F.et al.
:Chem.Pharm.Bull.、37:77-85、1989;非特許文献13、
Hashimoto、F.et al.:Chem.Pharm.Bull.、37:3
255-3263、1989;非特許文献14、Hashimoto、F.et al.
:Chem.Pharm.Bull.、40:1383-1389、1992)。



茶ポリフェノールは、その生合成機構の違いにより、二つに分類されている。即ち、生
葉中に元来含まれる一次ポリフェノールと、紅茶、烏龍茶等の製造工程(萎凋、発酵)で
、フラバン3-オール(flavan-3-ol)類から変換した二次ポリフェノールと
に大別される。一次ポリフェノールには、フラバン3-オール(flavan-3-ol
)類、プロアントシアニジン(proanthocyanidin)類、加水分解型タン
ニン(hydrolyzable tannin)類、チャルカン-フラバン二量体(c
halcan-flavan dimer)類、ウーロンホモビスフラバン(oolon
ghomobisflavan)類が含まれる。一方、二次ポリフェノールとして、テア
シネンシン(theasinensin)類、テアフラガリン(theaflagall
in)類、テアフラビン(theaflavin)類が含まれる(非特許文献9)。



いわゆる茶カテキン類と称する主ポリフェノールの、エピガロカテキン3-ガレート(
(-)-epigallocatechin 3-O-gallte、EGCG)、エピ
ガロカテキン((-)-epigallocatechin、EGC)、エピカテキン3
-ガレート((-)-epicatechin 3-O-gallate、ECG)、エ
ピカテキン((-)-epicatechin、EC)、ガロカテキン((+)-gal
locatechin、GC)、カテキン((+)-catechin、CA)を除く、
種々のポリフェノール類は、茶葉からの単離が容易ではなかったこともあって、種々の生
物活性試験を行うことが困難であった問題点がある。



近年、発酵茶より分離される5種のテアシネンシン類(theasinensin)の
COX-2遺伝子の発現抑制について報告した。COX-2の発現により産生されるタン
パク質を分析したところ、テアシネンシンA及びDはその産生を強く抑制し、結果として
COX-2の発現を抑制することを報告した(非特許文献15、益崎智子、他4名:平成
15年度日本農芸化学会西日本支部、中国・四国支部、日本栄養・食糧学会西日本支部、
日本食品科学工学会西日本支部鹿児島合同大会およびシンポジウム、2003年9月:3
7)。



特開2002-220340号(以下、特許文献1という)に、茶に由来する薬理組成
物(特許文献1の第0033~0056段落)の記載がある。「茶から抽出される温水抽
出物、ポリフェノール、カテキン類、EGCgなど、抽出後各生成段階で得られる成分に
ついて様々な薬理作用を検討し、その結果得られた知見に基づいて本発明を完成した物で
ある」、「この際、増強されるカテキンの薬理作用としては、少なくとも、シクロオキシ
ゲナーゼ-2活性阻害作用、インターフェロン-γ-産生抑制作用、腫瘍壊死因子-α-
産生抑制作用、フィブロネクチン介在細胞接着抑制作用、血管内皮細胞増殖因子(VGE
F)による欠陥内皮細胞増殖抑制作用、及び乳癌細胞増殖抑制作用を挙げることができる
」、「本発明はまた、上記の「温水抽出非カテキン成分」とカテキン類とを含む「混合物
X」を有効成分として含有し、好ましくは当該「混合物X」中に、(-)-エピガロカテ
キンガレート(EGCg)、(-)-エピカテキンガレート(ECg)、(-)-エピガ
ロカテキン(EGC)、(-)-エピカテキン(EC)、(-)-ガロカテキンガレート
(GCg)、(-)-カテキンガレート(Cg)、(±)-ガロカテキン(GC)及び(
±)-カテキン(C)の総量(以下、この総量を「カテキン総量」と呼び、これら8種類
のカテキンを「総カテキン」と呼ぶ。)としてカテキン類を約30%以上、例えば約30
~40重量%含有してなる薬理組成物を提案する」という記載がある(特許文献の第00
33、0038、0039段落)。



WO2004052873号(以下、特許文献2という)に、緑茶のポリフェノール並
びに関連誘導体の化学療法剤または化学予防剤の記載がある。「化学療法剤または化学予
防剤として有用な新規化合物の調整法であり、緑茶に含まれる例えばエピガロカテキン3
-Oーガレート(EGCG)の関連化合物であって、化学式(I)[C-C-C
格]のRからR11までの官能基がここに示すものを含む。」、「Rの官能基は好ま
しくは、O,S,NH,CHの官能基であって、」、「化合物の提供と共に、化学療
法または化学予防法として、薬理学的方法論もまた提供する。」という記載がある(特許
文献の要旨)。



その他、特開2000-226329号(以下、特許文献3という)に、MMP阻害剤
(特許文献3の第0001~0014段落)の記載がある。「カテキン化合物の抗酸化活
性や抗ウィルス活性、など多様な生物活性に着目し、カテキン化合物がMMPsに対して
阻害作用を有するかもしれないと推測し、カテキンのMMPs阻害活性を調べた結果、カ
テキンが、その多様な生物活性と併せて、MMP阻害作用を示し、結果として、MMPs
活性の調節不能に起因する難治性疾患の治療及び予防に対する有用性が期待できることを
見出した」という記載がある(特許文献3の第0013段落)。



特開2000-344672号(以下、特許文献4という)には、マトリックスメタロ
プロテアーゼ阻害剤(特許文献4の第0001~0014段落)の記載がある。「ポリフ
ェノール類であるタンニン化合物についても、MMPs阻害活性を調べた結果、該化合物
が、優れたMMP阻害作用を示し、結果として、MMPs活性の調節不能に起因する難治
性疾患の治療および予防に対して有用性が期待できることを見出し、本発明を完成した」
という記載がある(特許文献4の第0013段落)。



特開2004-359576号(以下、特許文献5という)には、アポトーシス誘導剤
(特許文献5の第0015、0016段落)と記載がある。「紅茶から抽出されたプルプ
ロガリン誘導体並びにその合成したプルプロガリン誘導体のヒト急性前骨髄性白血病疾患
細胞(HL-60細胞)に対するアポトーシス誘導を調べた結果、プルプロガリン(pu
rpurogallin)が濃度依存的および経時的にアポトーシスを誘導することと併
せて、テアフラビン(theaflavin)類も同様にHL-60細胞に対してアポト
ーシスを誘導することを見出し、結果として、正常細胞に対してアポトーシス誘導を起こ
させなくて、癌細胞に対してのみアポトーシスを誘導できることを見出した。」、「プル
プロガリン(Purpurogallin)がHL-60細胞に対してカスパーゼ8を活
性化し、カスパーゼ8の直接作用によりカスパーゼ3を活性化し、引き続いてDNAが断
片化され、アポトーシスが誘導されることを見出した。また、カスパーゼ8からはビッド
(Bid)は切断されず、ミトコンドリアからも細胞質へチトクロームcは放出されず、
カスパーゼ9は結果として活性化されないことを見出した。この細胞死機構は、HL-6
0細胞内の活性酸素の増加を伴わないでアポトーシスを誘導することを見出し、本発明を
完成した。」と記載がある。



特開2005-075790号(以下、特許文献6という)には、Apoptosis
誘導剤(特許文献6の第0019、0020段落)と記載がある。「紅茶から抽出された
ポリフェノール誘導体並びにその合成したポリフェノール誘導体のヒト急性前骨髄性白血
病疾患細胞(HL-60細胞)、ヒト大腸癌細胞(LoVo細胞)に対するアポトーシス
誘導を調べた結果、プロデルフィニジンB-2(prodelphinidin B-2
)が濃度依存的および経時的にアポトーシスを誘導することと併せて、ポリフェノール(
polyphenol)類も同様にHL-60細胞、LoVo細胞に対してアポトーシス
を誘導すること、癌細胞に対してアポトーシスを誘導できることを見出した。」、「プロ
デルフィニジンB-2(prodelphinidin B-2)がHL-60細胞に対
してカスパーゼ8を活性化し、カスパーゼ8の直接作用によりカスパーゼ3を活性化し、
引き続いてDNAが断片化され、アポトーシスが誘導されることを見出した。また、カス
パーゼ9も活性化されることを見出した。この細胞死機序は、HL-60細胞内の活性酸
素の増加を伴いアポトーシスを誘導することを見出し、本発明を完成した。」と記載があ
る。

産業上の利用分野


本発明は、抗炎症作用、特に、シクロオキシゲナーゼ-2(cyclooxygena
se-2;以下、COX-2)阻害作用及び/又はプロスタグランジンE2(以下、PG
E2)生合成阻害作用を有するポリフェノール誘導体に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
エピテアフラガリン3-O-ガレートもしくはプルプロガリンまたは薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物を有効成分として含有するプロスタグランジン生合成阻害剤

【請求項2】
エピテアフラガリン3-O-ガレートもしくはプルプロガリンまたは薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物を有効成分として含有するシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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