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脳神経細胞への薬物の標的化剤 外国出願あり

国内特許コード P110002385
整理番号 04P042JP
掲載日 2011年4月15日
出願番号 特願2007-556048
登録番号 特許第4945766号
出願日 平成19年1月24日(2007.1.24)
登録日 平成24年3月16日(2012.3.16)
国際出願番号 JP2007051528
国際公開番号 WO2007086587
国際出願日 平成19年1月24日(2007.1.24)
国際公開日 平成19年8月2日(2007.8.2)
優先権データ
  • 特願2006-015320 (2006.1.24) JP
発明者
  • 口岩 聡
  • 口岩 俊子
出願人
  • 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 脳神経細胞への薬物の標的化剤 外国出願あり
発明の概要 本発明は、薬物の標的化剤、具体的には薬物を脳神経細胞に取り込ませるための標的化剤に関する。また本発明は、該標的化剤と薬物とを含む医薬に関する。さらに本発明は、脳神経細胞に薬物を標的化するための方法に関する。
従来技術、競合技術の概要


精神活動は、脳内の神経回路網の活動によって営まれているが、その活動の調節には神経伝達物質などの生理活性物質の働きがきわめて重要である。神経伝達物質などの調節が正常に営まれなくなると、さまざまな神経症状が発症する。ドパミンが欠乏するパーキンソン病、アセチルコリンが関係するアルツハイマー病、セロトニンが関係する鬱病などがその例であり、現在多くの脳疾患が神経伝達物質などの調節異常によって引き起こされることが明らかになっている。
神経伝達物質の異常による疾病は、理論的には、神経伝達物質の活動を正常に戻すことにより治癒させることができるものが多いと推察される。しかし、脳には血液脳関門と呼ばれる物質に対するバリア(脳の神経細胞は、血液中から必要な物質だけを選択的に取り込み、不必要な物質又は有害な物質を取り込まない仕組み)が存在するので、服薬や静脈注射で投薬された薬物は、病巣となっている神経細胞集団に到達しないことが多い。たとえば中脳黒質のドパミンが欠乏することにより発症するパーキンソン病では、不足しているドパミンを黒質に補給すれば病状は改善することはわかっているが、ドパミンを投薬しても症状は改善しない。ドパミンのような生理活性物質の多くは血液脳関門を通過しないからである。このように、脳の疾患に対しては、服薬や静脈注射は効果をもたないことが多い。
脳への投薬法には、腰椎穿刺によって脳脊髄液中に直接注射する方法もある。脳と脊髄の表面には脳脊髄液が存在し、脳と脊髄は脳脊髄液に浮かんだ状態で保護されているので、脳脊髄液中に薬液を注射する(腰椎槽からカニューレを挿入し薬液を脳脊髄液中に注入する)ことにより、脳表面や脳室に薬液を浸透させることができる。しかし、脳脊髄液と神経細胞の間にも髄液脳関門と呼ばれるバリアが存在するので、薬物を脳の特定部位に思うように送達することはできない。
したがって、脳の疾患を投薬治療するためには、血液脳関門や髄液脳関門の問題を克服することが必要である。
上述のように、脳疾患に対する薬物治療では、血液脳関門又は髄液脳関門のハードルを克服する必要がある。しかし、薬物が血液脳関門や髄液脳関門を素通りしてしまうと、脳全体に無差別に薬物が浸潤する可能性があり、重大な副作用を発症させる可能性が高い。したがって、脳疾患の治療薬は、病巣となっている神経細胞だけに取り込まれ、それ以外の正常な神経細胞には薬物が到達しないことが望ましい。たとえば、縫線核におけるセロトニン産生量が不足して重い精神症状に悩む患者には、セロトニンを産生する神経細胞群だけにセロトニン合成関連酵素等を取り込ませることが望ましい。また、小脳のプルキンエ細胞の障害により重篤な運動障害に苦しんでいる患者には、プルキンエ細胞だけに目的の薬物を投与することが好ましい。副作用を極力抑制することと、投薬量を正確にコントロールするために、投薬された薬物は目的の神経細胞以外には取り込まれないことが理想である。
上述のように、脳表面と脳室表面には髄液脳関門が存在し、脳脊髄液から神経細胞への自由な物質の流れは抑制されている。したがって脳脊髄液中へ薬物を投与しても治療目的の神経細胞集団に取り込まれることは、期待できないと考えられてきた。しかし、後述するように、本発明者の研究(後述)及び他の研究者の研究により、特定の神経細胞が脳表面又は脳室表面からある特定の物質を取り込み細胞体内に蓄積することが明らかとなっている(非特許文献1:Zhangら,Brain Research,第989巻第1-8頁、2003年)。例えば、脳実質に取り込まれるグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)を直接脳脊髄液中に注入し、脳実質にGDNFを取り込ませることにより、パーキンソン病の原因となっているドパミン病態を改善させうることが報告されている(非特許文献2:Lapchakら,Brain Research,第747巻第92-102、1997年)。また例えば、ローダミン標識マイクロスフィア、コレラトキシン、及びフルオロゴールドを第三脳室に注入し、縫線核において標識が出現することが報告されている(非特許文献3:Larsenら,Neuroscience,第70巻第963-988、1996年)。しかしながら、このような物質を利用した脳神経細胞群を治療対象とする薬物の送達方法は報告されていない。

産業上の利用分野


本発明は、薬物の標的化剤、具体的には薬物を脳神経細胞に取り込ませるための標的化剤に関する。また本発明は、該標的化剤と薬物とを含む医薬に関する。さらに本発明は、脳神経細胞に薬物を標的化するための方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
脳神経細胞により取り込まれるエンテロトキシン又はレクチンを含むことを特徴とする、薬物を脳脊髄液から脳神経細胞に取り込ませるための標的化剤であって、該エンテロトキシンが、コレラトキシン(CT)、大腸菌易熱性エンテロトキシン(LT)、大腸菌耐熱性エンテロトキシン(ST)、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン(StE)、及びボツリヌス菌エンテロトキシンからなる群より選択され、該レクチンが、ミヤコグサレクチン、ハリエニシダレクチン、ピーナツレクチン、ダイズレクチン、ヒマレクチン、モクワンジュレクチン、インゲンマメレクチン、ドリコスマメレクチン、エンジュマメレクチン、マッシュルームレクチン、タチナタマメレクチン、レンズマメレクチン、エンドウマメレクチン、ソラマメレクチン、コムギ胚芽レクチン、アメリカヤマゴボウレクチン、ジャガイモレクチン、カブトガニレクチン及びイヌエンジュマメレクチンからなる群より選択される、上記標的化剤

【請求項2】
脳神経細胞が、小脳プルキンエ細胞、縫線核ニューロン、大脳皮質ニューロン、視床下部ニューロン、視床ニューロン及び脳幹ニューロンからなる群より選択されるものである、請求項1記載の標的化剤。

【請求項3】
脳神経細胞が、小脳プルキンエ細胞である、請求項1記載の標的化剤。

【請求項4】
脳神経細胞が、縫線核ニューロンである、請求項1記載の標的化剤。

【請求項5】
エンテロトキシン無毒化されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の標的化剤。

【請求項6】
脳神経細胞により取り込まれるエンテロトキシンがコレラトキシンBサブユニットである、請求項1~4のいずれか1項に記載の標的化剤。

【請求項7】
脳神経細胞により取り込まれるレクチンがコムギ胚芽凝集素である、請求項1~4のいずれか1項に記載の標的化剤。

【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の標的化剤及び薬物を含み、該薬物を脳神経細胞に標的化するための医薬。

【請求項9】
標的化剤と薬物とが直接結合されている、請求項8に記載の医薬。

【請求項10】
脳脊髄液中に投与される、請求項8又は9に記載の医薬。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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