新規糖固定化金属ナノ粒子およびこれを用いて糖-タンパク質相互作用を測定する方法、並びに糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収する方法
国内特許コード | P110004099 |
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整理番号 | V350P001WO |
掲載日 | 2011年7月6日 |
出願番号 | 特願2007-517926 |
登録番号 | 特許第4883640号 |
出願日 | 平成18年5月26日(2006.5.26) |
登録日 | 平成23年12月16日(2011.12.16) |
国際出願番号 | JP2006310592 |
国際公開番号 | WO2006126689 |
国際出願日 | 平成18年5月26日(2006.5.26) |
国際公開日 | 平成18年11月30日(2006.11.30) |
優先権データ |
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発明者 |
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出願人 |
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発明の名称 |
新規糖固定化金属ナノ粒子およびこれを用いて糖-タンパク質相互作用を測定する方法、並びに糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収する方法
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発明の概要 | 容易に糖鎖を固定化することができる安定な新規糖固定化金属ナノ粒子、およびこれを用いて非標識でしかも安価かつ容易に糖-タンパク質相互作用を測定する方法、並びに糖-タンパク質相互作用体から簡便にタンパク質を回収する方法を提供する。 マルトースとリンカー化合物とを結合させたリガンド複合体を金ナノ粒子と結合させてマルトース固定化金ナノ粒子を得た。このマルトース固定化金ナノ粒子をコンカナバリンAの希釈系列に加えることにより、マルトースとConAとの糖-タンパク質相互作用体が生成され、マルトース固定化金ナノ粒子のコロイド溶液由来の赤紫色が消失した。すなわち、非標識で目視によって糖-タンパク質相互作用を確認することができた。 |
従来技術、競合技術の概要 |
糖とタンパク質との相互作用(以下「糖-タンパク質相互作用」と記載する)は、細胞-細胞や細胞-細胞外基質そして細胞-病原体相互作用の理解を深めるために、構造生物学上長い間興味を持たれている領域である。 糖-タンパク質相互作用は、通常、リガンドタンパク質または複合糖質を放射性同位元素や酵素で標識して解析される。例えば、ELISA法やブロッティング法などにおいて、ピリジルアミノ化や蛍光等により標識した糖鎖や、2次抗体などで標識されたタンパク質を用いる方法がある。ピリジルアミノ化や蛍光等により標識した糖鎖を用いて糖-タンパク質相互作用を分析する方法としては、ピリジルアミンを結合させた糖鎖を用いて、糖-タンパク質間相互作用を蛍光により、TLC(薄相クロマトグラフィ)やHPLC(高速液体クロマトグラフィ)で測定する方法が挙げられる(非特許文献1)。また、2次抗体などで標識されたタンパク質を用いて糖-タンパク質相互作用を分析する方法としては、標識を施した2次抗体を用いて蛍光をアレイで測定する方法が挙げられる(非特許文献2)。 一方、標識剤を必要としない方法としては、例えば表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;以下SPRと記載する)や水晶発振子マイクロバランス(Quarts Crystal Microbalance;以下QCMと記載する)等の方法がある。 SPRは、糖の一部を模擬したオリゴ糖を含んでなるリガンド複合体をセンサチップ表面上に導入し、このリガンド複合体が導入されたセンサチップを用いて、オリゴ糖と特異的に相互作用するタンパク質等の物質を特定する方法である。QCMは、交流電圧を印加した水晶発振子が外的な要因が加わらない限り常に一定の振動を繰り返す性質を利用し、水晶発振子上に何かが付着した場合の振動数の変化を測定することにより糖-タンパク質相互作用を測定する方法である。 糖を固定化する合成手法としては、あらかじめ糖鎖を芳香族アミノ基で修飾したものと、金属コロイドにアルデヒド基を導入したものを還元アミノ化反応を用いて結合させる方法(非特許文献3)や、金属コロイドと結合するためのチオール基を持つ化合物と糖鎖との結合をグリコシル化反応(トリクロロアセトイミデート法)を用いて行う方法(非特許文献4)など多く報告されている。 また、従来、糖鎖を固定化するためには、例えば上記非特許文献3に記載の方法では糖鎖に芳香族アミノ基を導入したものを用いるため前処理が必要となり、上記非特許文献4に記載の方法では合成に少なくとも5ステップは必要である等、合成・精製過程が非常に複雑であり、容易に糖鎖を固定化することは困難であるという問題があった。 さらに、糖-タンパク質相互作用を分析する手法として、タンパク質を基にして糖鎖を評価する方法は古くから行われているが、糖鎖を基にしてタンパク質を評価する方法はあまり行われていない。また、糖とタンパク質とが相互作用した糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収することができれば非常に経済的であるが、係る方法は見出されていなかった。 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に糖鎖を固定化することができる安定な新規糖固定化金属ナノ粒子、およびこれを用いて非標識でしかも安価かつ容易に糖-タンパク質相互作用を測定する方法、並びに糖-タンパク質相互作用体から簡便にタンパク質を回収する方法を提供することにある。 |
産業上の利用分野 |
本発明は、新規糖固定化金属ナノ粒子およびこれを用いて糖-タンパク質相互作用を測定する方法、並びに糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収する方法に関するものであり、特に、還元末端を有する糖とリンカー化合物を結合させたリガンド複合体と、金属ナノ粒子とを結合させた新規糖固定化金属ナノ粒子、これを測定媒体とすることにより非標識で糖-タンパク質相互作用を測定する方法、並びに糖-タンパク質相互作用体の凝集が解離する条件を利用して糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収する方法に関するものである。 |
特許請求の範囲 |
【請求項1】 末端に芳香族アミノ基を有するとともに、主鎖に炭素-窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を備えるとともに、硫黄原子を含む炭化水素構造を備えているリンカー化合物と、還元末端を有する糖とが上記アミノ基を介して結合している構造を有するリガンド複合体と、金とを結合させてなる糖固定化金属ナノ粒子であって、 テトラクロロ金(III)酸ナトリウムと、水素化ホウ素ナトリウムと、を混和することによって調製された金ナノ粒子の溶液に、上記構造を有するリガンド複合体を混和することによって調製され、 安定であり、 上記金ナノ粒子の溶液と、上記リガンド複合体とを混和することによって調製された糖固定化金属ナノ粒子の溶液に対し、テトラクロロ金(III)酸ナトリウムが0.5mM~4mM、水素化ホウ素ナトリウムが金イオンのモル濃度の3~10倍モル濃度、上記リガンド複合体が10μM~1000μM含まれており、 上記糖固定化金属ナノ粒子は、糖をタンパク質と相互作用させることによって糖-タンパク質相互作用体を生成しうることを特徴とする糖固定化金属ナノ粒子。 【請求項2】 上記硫黄原子を含む炭化水素構造は、S-S結合またはSH基を含む炭化水素構造であることを特徴とする請求項1に記載の糖固定化金属ナノ粒子。 【請求項3】 請求項1または2に記載の糖固定化金属ナノ粒子を含む溶液と、上記糖固定化金属ナノ粒子の末端に位置する糖を認識するタンパク質とを混和することによって、糖とタンパク質とを相互作用させ、糖-タンパク質相互作用体を生成させる工程を含むことを特徴とする糖-タンパク質相互作用の測定方法。 【請求項4】 請求項1または2に記載の糖固定化金属ナノ粒子を含む溶液と、上記糖固定化金属ナノ粒子の末端に位置する糖を認識するタンパク質とを混和して糖とタンパク質とを相互作用させ、糖-タンパク質相互作用体を生成させる工程と、 当該糖-タンパク質相互作用体と水とを混和した混和液のpHを5以下とする工程と、を含むことを特徴とする糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収する方法。 【請求項5】 請求項1または2に記載の糖固定化金属ナノ粒子を含む溶液と、上記糖固定化金属ナノ粒子の末端に位置する糖を認識するタンパク質とを混和して、糖とタンパク質とを相互作用させ、糖-タンパク質相互作用体を生成させる工程と、 当該糖-タンパク質相互作用体と上記タンパク質が認識可能な糖とを混和する工程と、 を含むことを特徴とする糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収する方法。 |
国際特許分類(IPC) |
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Fターム | |
出願権利状態 | 登録 |
『 新規糖固定化金属ナノ粒子およびこれを用いて糖-タンパク質相互作用を測定する方法、並びに糖-タンパク質相互作用体からタンパク質を回収する方法』に関するお問合せ
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