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生体関連物質と糖鎖との相互作用の測定方法、生体関連物質の糖鎖選択性の評価方法、生体関連物質のスクリーニング方法、および生体関連物質のパターニング方法、並びにこれらの方法を実施するためのキット

国内特許コード P110004062
整理番号 V350P003
掲載日 2011年7月6日
出願番号 特願2007-324036
公開番号 特開2008-175813
登録番号 特許第5278992号
出願日 平成19年12月14日(2007.12.14)
公開日 平成20年7月31日(2008.7.31)
登録日 平成25年5月31日(2013.5.31)
優先権データ
  • 特願2006-340554 (2006.12.18) JP
発明者
  • 隅田 泰生
  • 西村 知晃
  • 岸本 裕子
  • 山下 早希子
  • 鶴田 祥子
  • 若尾 雅広
  • 奥野 壽臣
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 国立大学法人 鹿児島大学
  • 隅田 泰生
発明の名称 生体関連物質と糖鎖との相互作用の測定方法、生体関連物質の糖鎖選択性の評価方法、生体関連物質のスクリーニング方法、および生体関連物質のパターニング方法、並びにこれらの方法を実施するためのキット
発明の概要 【課題】微量の生体関連物質を用いて、生体関連物質と、糖鎖との相互作用を同時に非標識で、網羅的にリアルタイムで測定し、糖鎖に対する特異性の観点から生体関連物質をスクリーニングする方法やパターニングをする方法を提供する。
【解決手段】生体関連物質と、糖鎖との相互作用の測定方法であって、リガンド担持体に、生体関連物質を含む溶液を接触させる工程を含み、上記リガンド担持体は、硫黄原子を有するリンカー化合物と糖鎖とが結合した構造を備えるリガンド複合体が、1~500種類/cmとなるように、それぞれ独立して支持体の表面に固定されていると共に、上記表面は金属を備えており、上記生体関連物質は、タンパク質、ウィルス、細胞、細菌、リポソーム、およびミセルからなる群より選ばれる1以上の生体関連物質であることを特徴とする方法である。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


糖鎖は、糖がグリコシド結合で複数結合した化合物であり、糖鎖を構成している糖の種類や当該糖の配列を考えると、糖の組み合わせとしては無数の組み合わせがある。そのため糖鎖の種類は多種多様である。また、糖鎖はウィルス、細胞、細菌またはタンパク質といった様々な生体関連物質と相互作用することが知られている。ゆえに、糖鎖と上述の生体関連物質との相互作用が、生体の生理状態に及ぼす影響は大きい。



例えば、生体関連物質であるインフルエンザウィルスやエイズウィルス、B型肝炎ウィルスはヒトに感染すると重篤な疾病を引き起こすが、その感染は、ヒトの細胞の細胞膜上の糖鎖と相互作用することがきっかけで始まることが知られている。そして、ウィルスによって相互作用する糖鎖は異なるため、ウィルスの人体への感染経路や人体に及ぼす症状に違いが生じる。



例えば、非特許文献1に開示されているように、インフルエンザウィルスの各分離株においても、当該各分離株が相互作用する糖鎖は、糖鎖を構成している糖や、当該糖の配列によって異なることが明らかとなっている。一般的に、ヒトに感染することができるインフルエンザウィルスは、N-アセチルノイラミン酸α2,3-ガラクトース(NeuAcα2,3Gal)よりもN-アセチルノイラミン酸α2,6-ガラクトース(NeuAcα2,6Gal)と強く相互作用することが知られている。



そのため、ウィルスと糖鎖との相互作用を網羅的に測定することが、ウィルス感染の予防や治療の戦略を立てる上で重要である。



一方、糖鎖とタンパク質に代表される生体関連物質との相互作用は、従来から、酵素標識免疫測定法やウェスタンブロット法等を用いることにより検出されている。上記検出方法は、糖鎖に結合した生体関連物質を主に蛍光物質や、酵素や、抗体を用いることで検出する方法である。



また、他の検出方法として、非特許文献2には、糖鎖マイクロアレイによる糖鎖とタンパク質との相互作用の検出方法が開示されている。その内容とは、即ち、化学的に糖鎖を修飾したアルブミンなどに代表される糖鎖修飾タンパク質を作製し、当該糖鎖修飾タンパク質をマイクロアレイ用の媒体上に固定することにより、糖鎖を間接的に上記媒体上に固定する。そして、上記媒体とタンパク質とを反応させた後、蛍光物質を用いて上記糖鎖と上記タンパク質との相互作用を検出するというものである。



また、非特許文献3には、金ナノ粒子上に固定された糖鎖とタンパク質との相互作用の検出方法が開示されている。その内容とは、即ち、金ナノ粒子上にアルデヒド基を有するポリエチレングリコールを固定し、当該アルデヒド基と糖鎖とを反応させることにより当該糖鎖を間接的に上記金ナノ粒子上に固定する。そして、当該金ナノ粒子とタンパク質とを反応させた後、当該金ナノ粒子の表面プラズモンバンドの強度を測定することや、透過型電子顕微鏡図を撮影することにより、上記糖鎖と上記タンパク質との相互作用を検出するというものである。



また、非特許文献4には、金ナノ粒子上に固定された糖鎖と別の金ナノ粒子上に間接的に固定された糖鎖との相互作用の検出方法が開示されている。その内容とは、即ち、チオール基を有する糖鎖-脂肪酸を作製し、当該糖鎖-脂肪酸を金ナノ粒子上に固定する。そして、当該金ナノ粒子同士を反応させた後、透過型電子顕微鏡図を撮影することにより、当該金ナノ粒子上に固定された上記糖鎖同士の相互作用を検出するというものである。



また、非特許文献5には、糖鎖マイクロアレイによる糖鎖と、タンパク質やヒト血清や植物の細胞壁抽出物等の生体関連物質との相互作用の網羅的な検出方法が開示されている。その内容とは、糖鎖が固定されたマイクロアレイ用の媒体と生体関連物質とを反応させた後に、蛍光物質や抗体等を用いることにより、上記糖鎖と上記生体関連物質との相互作用を検出するというものである。



また、特許文献1には、表面プラズモン共鳴による、タンパク質と糖鎖との相互作用の測定方法が開示されている。その内容とは、糖鎖が固定された媒体とタンパク質とを反応させ、反応で生じる表面プラズモン共鳴を測定することで、上記糖鎖とタンパク質との相互作用を測定するものである。



また、非特許文献6には、インフルエンザウィルスと糖鎖との相互作用の検出方法が開示されている。その内容は、TLCに展開した糖鎖と相互作用したインフルエンザウィルスを、抗体を用いて検出するというものである。
【特許文献1】
WO2005/077965号公報(2005年8月25日公開)
【非特許文献1】
VIROLOGY, 1997, 227, 493-499
【非特許文献2】
Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3607-3610
【非特許文献3】
J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 8226-8230
【非特許文献4】
Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, No.12, 2258-2260
【非特許文献5】
Curr. Opinon Struct. Biolog., 2003, 13, 637‐645
【非特許文献6】
VIROLOGY, 1992, 189, 121-131

産業上の利用分野


本発明は、生体関連物質と糖鎖との相互作用の測定方法であって、特に、上記生体関連物質は、タンパク質、ウィルス、細胞、細菌、リポソーム、およびミセルからなる群より選ばれる1以上の生体関連物質であって、上記生体関連物質と、多種多様な糖鎖との相互作用を非標識で、網羅的に迅速かつ直接にリアルタイムで数値化して測定する方法、および当該測定方法を用いた、上記生体関連物質の糖鎖選択性の評価方法、上記生体関連物質のスクリーニング方法、並びに上記生体関連物質のパターニングの方法、そしてこれらの方法を実施するためのキットに関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
生体関連物質と、糖鎖との相互作用の測定方法であって、
リガンド担持体に、生体関連物質を含む溶液を接触させる工程を含み、
上記リガンド担持体は、硫黄原子を有するリンカー化合物と糖鎖とが結合した構造を備えるリガンド複合体が、2~500種類/cmとなるように、それぞれ独立して支持体の金属を備えた表面に、金属-硫黄結合によって固定されていると共に、
上記生体関連物質は、ウイルスであることを特徴とする方法。

【請求項2】
生体関連物質の糖鎖選択性の評価方法であって、
リガンド担持体に、生体関連物質を含む溶液を接触させて、当該生体関連物質と糖鎖との相互作用の測定を行う工程と、
上記測定の結果得られる上記生体関連物質の糖鎖に対する特異性を特定する工程とを含み、
上記リガンド担持体は、硫黄原子を有するリンカー化合物と糖鎖とが結合した構造を備えるリガンド複合体が、2~500種類/cmとなるように、それぞれ独立して支持体の金属を備えた表面に、金属-硫黄結合によって固定されていると共に、
上記生体関連物質は、ウイルスであることを特徴とする方法。

【請求項3】
生体関連物質のスクリーニング方法であって、
リガンド担持体に、目的の生体関連物質を含む溶液または、対照の生体関連物質を含む溶液を別々に接触させて、それぞれの生体関連物質と糖鎖との相互作用の測定を行う工程と、
上記測定を上記目的の生体関連物質を含む溶液を用いて行った場合の結果と、上記測定を上記対照の生体関連物質を含む溶液を用いて行った場合の結果とを比較し、上記結果を一致させる工程とを含み、
上記リガンド担持体は、硫黄原子を有するリンカー化合物と糖鎖とが結合した構造を備えるリガンド複合体が、2~500種類/cmとなるように、それぞれ独立して支持体の金属を備えた表面に、金属-硫黄結合によって固定されていると共に、
上記生体関連物質は、ウイルスであることを特徴とする方法。

【請求項4】
生体関連物質のパターニング方法であって、
リガンド担持体に、2種類以上の生体関連物質を含む溶液を別々に接触させて、それぞれの生体関連物質と糖鎖との相互作用の測定を行う工程と、
上記測定結果を比較し、分類する工程と、を含み、
上記リガンド担持体は、硫黄原子を有するリンカー化合物と糖鎖とが結合した構造を備えるリガンド複合体が、2~500種類/cmとなるように、それぞれ独立して支持体の金属を備えた表面に、金属-硫黄結合によって固定されていると共に、
上記生体関連物質は、ウイルスであることを特徴とする方法。

【請求項5】
上記リンカー化合物が、一般式(1)
【化1】


(式中、nは0以上6以下の整数)にて表される構造を備え、
上記Xとして、末端に芳香族アミノ基を有するとともに、主鎖に炭素-窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を、1鎖又は4鎖含んでなる多分岐構造部位である構造を備え、上記Yとして、硫黄原子を含む炭化水素構造を備えているリンカー化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。

【請求項6】
上記ウイルスが、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、ノロウイルス、HTLV-1ウイルス、エイズウイルス、ロタウイルス、SARSウイルス、または、B型肝炎ウイルスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。

【請求項7】
上記生体関連物質が、インフルエンザウイルスまたはヘルペスウイルスであり、
上記糖鎖が、Galβ1-4Glc、Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc4Sβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc6Sβ1-6Glc、GlcA2Sβ1-3GalNAc6Sβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc4S6Sβ1-6Glc、GlcNS6Sα1-4IdoA2Sα1-6Glc、GlcNSα1-4IdoA2Sα1-6Glc、GlcNS6Sα1-4GlcA2Sβ1-6Glc、およびGlcNSα1-4GlcAβ1-6Glcからなる群より選ばれる1以上の糖鎖であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
硫黄元素を有するリンカー化合物に糖鎖が結合している構造を備えたリガンド複合体が、2~500種類/cmとなるように、それぞれ独立して、支持体の金属を備えた表面に金属-硫黄結合によって固定されたリガンド担持体を備えた、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキット。

【請求項9】
上記糖鎖は、Galβ1-4Glc、Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-3GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、Neu5Acα2-6Galβ1-4GlcNAcβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc4Sβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc6Sβ1-6Glc、GlcA2Sβ1-3GalNAc6Sβ1-6Glc、GlcAβ1-3GalNAc4S6Sβ1-6Glc、GlcNS6Sα1-4IdoA2Sα1-6Glc、GlcNSα1-4IdoA2Sα1-6Glc、GlcNS6Sα1-4GlcA2Sβ1-6Glc、およびGlcNSα1-4GlcAβ1-6Glcからなる群より選ばれる1以上の糖鎖であることを特徴とする請求項8に記載のキット。
国際特許分類(IPC)
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